虚域夕刻

□予定調和の裏
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「【お子様を次世代のニューリーダーに育てます。学年・教科は問わず。リボーン】」



ポストに入っていたチラシを“らしく”読み上げる。



「………まあ」



数秒の間きょとん、とした奈々は頬に手を添えながら小さく驚いた。

…もう三十半ば近いとは全く感じさせない少女のような心身を持つこの彼女こそが偽りだと、誰が気付くだろうか。


チラシを見つつどうしようかしら、と悩むフリをしている裏で、奈々はほんの僅かに瞳を細める。



「(1人…ということは、)」



時が、来たのだろう。


時々監視に来る者は最低でも4人で、こんなにも気配を消せる実力者ではなかった。

それに比べ、この気配の者は今までの者達とは全体的に格が違う。


愛する夫から聞かされていた、ボンゴレというマフィアとリボーンという殺し屋。

予想していた未定が、確定された道筋へと変わる。


再び、愛息子に強要される、懐かしい血と闇の世界。



―――まだ、囚われているというのに。



愚かにも引きずり込もうとするボンゴレに、純粋な嫌悪と憎悪を抱く。

できれば、こんなもの破り棄てたい。

けれど、これは“沢田奈々”が喰いつく事を前提とした物。

これに喰いつかなければ、喰いつく事よりも面倒な事になるだろう事は容易に察せる。


そして、もしこれが確定された未来になった場合に実行する、家族で決めたせめてもの抵抗が有るから。



「ふふふ、決めた♪」



上機嫌に申し込みを始める“沢田奈々”の心の内。

奈々は、仮面とは違う意味での上機嫌で微笑んだ。



―――外と時と抗いが無意味なら、内から蝕んで腐らせ壊滅させれば良いでしょう?


 
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