頂き物

□ありがとう
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事の起こりは、スネークの留守中に起こった…らしい。
他の兵士たちから聞いたところによるとある女兵士が「副司令と寝た」と言い始め、結局それは嘘だったらしいのだがそれをきっかけに女関係がボロボロと出てきてしまい女同士の喧嘩になったとか。
しかもそれを当事者である筈のカズが一切関わらなかったと言うのだ。
普段なら関係ない喧嘩でも止めに入るというのに。

「悪かった。今後はこういうことが起こらないようにする。……それでいいだろ?」

それだけいうと自室に篭ってしまった。
誰に見られているわけでもないが、スネークはやれやれどうしたものかと肩をすくめた。
一度意固地になるとなかなかなだめるのは大変だ。
有無を言わさず「何やってる!」と殴ってしまえばよかったのだろうか?


そのほうが他の隊士たちにも示しがついた?
夕飯の時刻になっても食堂には現れず件の女性兵士に「私のせいだ」と泣きつかれた。
他の兵士たちもカズのらしからぬ行動に不安が隠せないようだ。

やはりここは俺がなんとかするしかないのか、と夕食後カズの部屋を訪ねた。
「カズ?」
コンコンと何度かノックをしてみるが返事がない。
試しにノブを回してみると鍵はかかっていないようだ。
ドアを開けると中は薄暗い。
寝ているのか?とベッドを見てもいない。
どこだ?と部屋を見渡すとデスクの影から脚が見える。
「カズ!」
慌ててデスクへ駆け寄るとカズが倒れていた。
「おい!どうした!」
何が原因で倒れているのか分からないので下手に動かせない。
万が一脳が原因だったり頭部を強打していたら危険だ。
触れると異様に冷たい。
しかし脈は遅いもののしっかりしている。
すぐに医療班を呼び医務室へと運んだ。
倒れていた原因は貧血。

「アホか!」
「アホってなんだよ!」

起き上がれないため医務室のベッドの中からカズが反論する。

「なんで調子の悪いことを言わない」
「格好悪いだろ」
「日本人の美徳だかなんだか知らんが、隠すことがいいことだとは俺は思わん!」
「…………」
「結局こうして人に迷惑かけるだろうが……!」
「……っ……お、俺だって好きで迷惑かけたんじゃないっ!かけたく……ないから……っ……」

感極まったのかぎゅっと閉じた目から大粒の涙がポロリとこぼれる。
それに対しスネークもどうしていいか分からなくなり思わず怒鳴ってしまった。
「もう好きにしろ!」
医務室のドアを思い切り閉めて廊下に出たとたんに後悔する。
弱っている相手にあの態度はよくなかった。
しかしどうにも冷静にあんな状態のカズを見ていられなかった。
カズが見栄はりで体面を気にする性質なのは知っていたし、このと
ころオーバーワークなのも知っていた。
本当なら自分が配慮をしてやらなければいけなかった。
お互いにフォローしあってこその司令と副司令じゃないのか。
そのまま廊下に立ち尽くしていると医療班の隊士が出てきた。

「あ、ボス……」
「カズはどうした?」
「あ、はい……少し取り乱されておりましたし……起き上がろうとするので安定剤を打ちました」
「……そうか、悪かったな。そうだ、これから定期的に……カズを診てやってくれないか」
「そうですね。私もそのほうがいいと思いました。でもそれはボスも同じことですよ?TOPのお二人に倒れられては立ち行きませんから。副司令に定期的な健康診断を行うならボスも行ってください」
「そりゃそうだ。……わかった。了解した」



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