*今回のお相手→佐久間くん
※切なめです。苦手な人はバックプリーズ!



"春は出会いの季節だ"そう人は言う。ならば、今この状況を誰か説明してみせてよ、ねえ。
私の目の前には愛しい彼。その顔はどこまでも悲しく、果てしなく綺麗だった。
桜がはらはらと舞う。ああ、風よやんで。このまま風が吹き続けたら桜が全部散ってしまうじゃない。
私は未だ彼の目を見れずに、視線を桜へと向けたまま呟いた。


『..大介、の馬鹿』
「うん..ごめんね」


彼は本当に申し訳なさそうな声で謝る。別に謝って欲しいんじゃないの。私が彼に言って欲しい言葉は違う。
私は視線を桜から彼へと移した。彼は私の目を真っ直ぐに見つめている。


「ごめんね」


彼はもう一度謝った。違うのに。そんな言葉が聞きたいわけじゃないのに。
彼は今さっき私に別れを告げた。春休み。あと少しで新学期。彼は明日引っ越すらしい。
私は引っ越しても彼のことを好きでいれる自信がある。他のどんな男に言い寄られたって、彼以外には愛さないと誓える。..彼は、私とは違うかもしれないけど。
でも彼は私が好きだと言った。「じゃあなんで、」その答えを彼は言わない。教えてくれない。


「どうしても、なんだ」


彼が唐突に言う。どうしても、だなんて。なんていい言い訳なんだろう。じゃあ私も言うよ。どうしても大介とは別れたくない。
私はその言葉を口には出さず、黙ったまま彼を見つめる。彼は今にも泣きそうな顔で微笑んだ。


「一人で生きていかなきゃ」
『人間だから一人は無理よ』
「うん..でも、俺は決めた」
『一人で生きていくこと?』
「うん..ごめんね」


彼はまた謝る。何が一人で生きていくだ馬鹿。もし大介が一人で生きていけるとしても、私は生きていけないんだよ。
きっとそれなりの理由があるのはわかる。でも何故それを彼は言ってくれないのか。私には言えないのか。..他に女でも出来たなら言えばいいのに。
彼がそんな人ではないと知っているものの、私は心の中で呟いた。


『..ばいばい』
「..うん」


私はそっけなく言った。最低な彼女。最後くらい笑って彼を見送ればいいのに。
彼はそんな私にまた微笑んでから、背中を向けて歩き出した。ああ、行ってしまう。彼が私から離れてしまう。
私は今すぐにでも駆け出したい衝動に駆られた。後ろから思い切り彼に抱きついて、泣いて、離れないで別れないでって叫びたい。
私は一歩踏み出して、とどまった。..そんなこと出来るわけが、ない。
引き止めることを断念した、意気地なしな私は黙って彼の背中を眺めた。すると、彼は立ち止まり一言呟いた。


「愛してるよ」


彼がまた歩き出す。振り返らないでただ呟いた彼。それだけでも私には十分だった。
私はただ一人で泣きじゃくり、彼の姿が見えなくなるまで彼の名前を叫んだ。..結局、彼は振り返らなかったのだけれど。

桜の花が、また舞った。





(きっと別れは、出逢いを呼ぶから)





END
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拍手ありがとうございました!

春ということで桜をテーマに書いてみました!
春というと、みなさん出会いって感じのイメージを持つ人多いですよね。そこであえて別れということで。
少しスッキリしないようなお話になりましたが綾瀬は精一杯です←


スペシャルサンクス*いちり様



綾瀬 10,04,04〜






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