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□愛玩物にキス
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何もすることがないので壁紙をナイフで切り裂いたら隼人にすごく怒鳴られた。俺はただ構って欲しくて、俺に興味を向けて欲しいだけだったのに、軽く冗談を交えた甘えのつもりだったのに烈火の如く隼人は俺を怒鳴るから、俺もついついムキになった。
「出ていく!」
たった一言、そう言っただけでそれを実行しただけだ。

【愛玩物にキス】

「大体、隼人が悪いんだよ。いっつも学校行って、偽物の十代目に尽くしてさ、俺の扱いがぞんざいなんだぜ。それって許せねーだろ?だって俺王子だぜ?」
「そうか、それがお前のこの現状に対する最もらしい論理なんだな……だが、俺の部屋をなんだと思っている」
「知らねー、遊び場?」

家出と言っても別に俺の家じゃないからそういう言い方は語弊がある。居候していた場所の居心地が悪くなって衣食住の場所を元に戻して見ただけだ。それだけ。で、帰ってくるなりピアスだらけのボスしか見えてないような変態で殺人に対して凶悪な男の部屋に遊びに来ただけ。それだけ。
なのに、レヴィと来たら歓迎どころかキレてやんの。つまんねー。退屈そうな部屋を快適に切り裂いてやっただけなのに、米神に青筋たててやんの。遊んでやってもいいんだけど、血まみれになったら片づけにボスが色々煩そうだ。いや、弱い幹部はいらねーって俺を褒めてくれっかもしれねー。
喉の奥で残酷な笑いを奏でながら、レヴィをバラしても対して楽しめそうになさそうなことに気づき、俺は部屋を出た。殺しがいがあるのはやはり、同じ刃物を扱うあいつくらいだ。

「いい加減にしろよぉ、ガキが。三枚におろすぞ」
「だから、何?王子に対して魚類が何の文句があんの」

部屋に遊びに来てやったっていうのに歓迎どころか文句を言ってくるスクアーロに半分キレ気味で答える。ただ、部屋の備品をナイフで使い物にならなくしたくらいでいちいちキレるなんて気が短い奴だ。
どいつもこいつもいちいちいちいちどうしてすぐに怒るんだろうか。俺は構ってほしいだけで、遊んでやろうとしているだけなのに。

「愛されてんのに胡坐かいて駄々こねてんじゃねーよ」
「何?それなんの高論」

魚類がそんなつまらないことをいう資格なんてあるのかよ、そう言わんばかりに睨みつけてやるが瞳が髪に隠れているのであんまり効果がなかったらしい。スクアーロは顔色一つ変えない。全く、鈍い奴はこれだから困る。

「俺の見解だぁ」
「ふん、つまんねー」
「るせーな。だからガキは青くて困る。ほら、迎えが来たぜ」

背中をどんと押されて、つんのめった俺は瞬間スクアーロに殺気を抱く。本気でやりあえば勝てない相手ではないと思っているだけに小馬鹿にされたり、そういう扱いをされるとマジムカつく。足蹴りでないだけ許してやろうか、目の前に隼人がいることさえ忘れてぐるぐる思考を巡らせていると隼人が俺を睨んで怒鳴った。

「こんの馬鹿王子!」

息を切らしながら、肩を上下させながら真っ赤な顔をした隼人が憤慨する。その瞳は潤んでいて怒鳴っていながらも弱弱しさを感じて俺は胸が痛んだ。困らせることで俺に気を引かせるのには成功したけれど、悲しませたかったわけじゃない。
捻じれた心じゃ素直にごめんとは言えなくて、代わりに俺は彼の掌を持ち上げ、口づけた。
 

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