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※T&Bです
◎独占欲◎
全く、あの人は。
会話の相手に気付かれないよう、そっと息を吐く。
視界の端には、壁に寄り掛かる相棒がいた。退屈そうなその様は何処か気怠げに見え――いや、その一助を担ったのは僕だからその点に関しては何も言うまい。
パーティ仕様にドレスアップした彼は、普段の剽軽さが鳴りを潜めて凄絶な色気を放っている。溜息ひとつ零す姿さえ、やけに扇情的だ。ここにブルーローズがいたら、真っ赤になって絶句するのではないだろうか。
タイトなドレススーツは僕の物と対になるよう仕立てられた物だ。二人並んで立つと彼の細い腰と長い脚が強調されるから、女性陣から羨望と嫉妬染みた眼差しが向けられたのも一度や二度ではない。
それにしても、スポンサーやその候補相手のパーティなど面倒だ、とやる気の欠片もない癖に、どうして無駄に人誑しの才能を発揮するのか。
素の、鏑木・T・虎徹としての彼と関わればその人柄に惹き付けられ、ヒーロースーツを脱いだワイルドタイガーは黙って立っているだけでその姿に魅せられる。今だって、自分が密かに視線を集めている事など気付いてもいないのだろう。――ああ、もう我慢ならない。
「失礼」
一応断りを入れ、彼の元へ急ぐ。
既に必要な挨拶回りは終えている。後はヒーローを芸能人か何かと勘違いした、セレブリティ紛いのお相手ぐらいのものだ。ロイズさんやベンさんも、もう僕達がいなくなった所で咎めはしないだろう。
何の足しにもならない時間を費やしている間に僕以外の人間が彼に視線を奪われているかと思うと、全員の眼を潰してしまいたくなる。
「タイガーさん」
「バニー、終わった?」
「ええ」
壁の花が綻んで、更に色香を増す。周囲の空気が色めき立ったのは気のせいじゃないだろう。
「帰りましょうか」
彼の腰に腕を回す。
残念ながら、あなた方が触れる事は永遠に叶わない。
この美しい虎は、僕の物だ。
END.
Twitterの#同題二次TBさんの7/6のお題「才能」と#独占欲バニーの合わせ技