NOVEL

□夢
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今日も疲れた。

冷蔵庫を開けながら、俺はため息をつく。あいつが出ていってから大体三ヶ月経つだろうか……。家計や仕事の状況は、いつもと何ら変わっちゃいない。ただ、あれから心は罪悪感と後悔の念でいっぱいになっている。こういうのは時間が解決してくれるものだと三ヶ月前心を入れ換えたつもりでいたが、入れ換えきれていなかったらしい。あれから大分時間も経っているし、最近は毎日あいつのことを考えることはなくなったが、ふとあいつのことを思い出すと、もう駄目だ。何で俺はあそこでキレたんだろうとか、俺がもう少し大人だったらとか、何かもう色々と複雑な思いが混じって、口に表せないくらい心が重い。ため息しか出ねぇよ。誰かに相談するにしてもだ、「俺、実は殺人未遂的な行動を起こしたんだ」っつったら、完全に俺が悪いだろ。下手したら「自首しろ」とか言われるだろ。殺してもないのに、だ。いや、悪いのは完全に俺なんだけどよ……自分で分かってるから、相談の仕様もない。冷蔵庫の中のビールをプシュ、と開けたその時だった。

ピーンポーン

「……、?」

人が来るには遅い時間帯だった。俺は最初不思議に思ったが、これは直感なのか。

あいつ だと思った。

根拠はなかった。ただ頭の中にあいつの顔がよぎって、俺の気持ちが脳へと勝手に駆り立てられた。恐る恐る、玄関へ近づいて、ドアを開ける。

……やっぱり、か。

そこにはあいつが立っていた。俺に怒りを覚えているかのような、睨みつけるような表情で、俺を見ていた。……その、何だ。人間、本気で焦ると、逆に冷静になるんだな。

「何だ、戻ってきたのか」

結構淡泊な言葉を発していた俺が、そこにいた。

「……おい、どうし」

「っ!」

何も言わない奴に少しだけ手を伸ばそうとすると、奴は俺に怯えるように肩を震わせた。……小動物みたいで可愛い。……とか俺が思ってるのを知ったら、どう思うんだろうな、こいつ。ハァ、俺はため息をつく。

「……ま、当然っちゃ当然だな、その反応は」

「……お前、何で俺を」

"何で"。もしかしなくても"あの日"の事だろう。……ぶっちゃけ、説明すると長くなるからあんま言いたくねぇんだけど……そういうわけにもいかねぇよなぁ。そんな事よりも、内容が内容なだけにこいつ、軽蔑するかもしれねぇし。……こいつが軽蔑したところで、何だ?別に付き合わなきゃ良い話か。
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