キリリク
□ナカ様の1000番リク
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てくてくと道を歩く。
てくてくてく、と道を歩く。
てくてくてくてくてくてくてくと道を歩いて、立ち止まる。
はて、スーパーにたどり着く時間なのにまだ道だ。
アレは天下の困りモノ
こういう時は、慌てず騒がず、携帯を取り出して…。
「清麿か?スーパーにたどり着かない。」
『たどり着かないんじゃなくて、たどり着けなかったんでしょーが。』
舌打ち一つ。これでスーパーにたどり着けなかったの、通算99回目。
『100回いったらお仕置きだからな〜』
今頃清麿はこの携帯に内蔵されたGPSで位置を割り出し、タクシーの手配をするはずだ。やはりチェリッシュの力を借りないとスーパーにはいけないのだろうか?
「大丈夫だよ、デュフォー。」
ぞわっと背筋が悪寒で反り返る。
「僕が連れて行ってあげるから。…天国ま…」
ガスッ
とりあえず蹴っておく。アレだアレ。名前を出すのも気持ち悪い。
『おーい、デュー、大丈夫か?何があった?』
清麿の心配そうな(情けない)声に、我に戻る。
「大丈夫だ。」
「僕がいるから。」
ドスッ、ゴスッ
回し蹴りから踵落としをきめてみた。ぴくぴくしているが、あと20秒ほどでまたひっついてくるに違いない。…全く、高校生の時から俺を追っかけ回すこの存在は気持ちが悪い。
オレンジ(果実ではない。手榴弾のほう)は昨日、清麿に取り上げられてしまった。プラスチック爆弾でもかまさない限り、こいつは生き返ってくる。チャバネよりしぶとい。不死身ではないだろうかと思う今日この頃だ。
『おーい、デュー?』
「…大丈夫、だ。」
『全然だいじょーぶって声じゃないから!』
…その言葉に清麿もはっ倒したくなったけど、電波を介して攻撃するには今はアイテムが足りない。…昨日清麿に取り上げられたからだ。…まいった、というか、困った。
『もしもーし、もしもーし、もしもーし』
…………………。
ぷつ。
切った。その瞬間に抱きついてこようとしたアレを避ける。
「何でデュフォーはそんなに僕のこと避けるのかな?」
避けられているというのは理解していたらしい。
「やっぱり照れてるからかな?」
…前言撤回。逃げるか?だがヘタに動くと…ここの近くの曲がり角にアレの車が止まっている。拉致るつもりか?無駄なことを。ただスーパーに行けなくなる。それは困る。
エコバッグが入った手提げのカバンを近くに置く。…現金はさして入っていない。15万程度か。カードはいつも服の隠しに入っている。
「デュフォー、そんな君も可愛いよ。」
ああ、ウザい。チャバネが2匹同時にやってきた時の数千倍ウザい。蹴るとそこから腐りそうで嫌だ。
さっさと殺るか。この際だから。でも…清麿が困ると…俺も困る。どうしよう。
「そんな面倒なことはすんなー!」
!
右手をあげると手に慣れた重さ。手榴弾。俺の特製で安全装置をとると2秒で爆発。構わずピンと安全装置を抜いて、アレの腹に投げる。…145qか。少し落ちたか?
ちゅどーん!
盛大な音がするが音だけだ。アスファルトを5ミリたりとも傷つけない。…相手はアレだからどうだか分からないが、10分以上の足止めになることは確実だ。
手提げのカバンを持って、てくてくと投げてくれた清麿に近づく。荒い息をついている。
「デュー、おま、スーパー反対方向。」
?
「そうか、だから時間通りにつかなかったのか。」
ぽん、と手を叩くと、清麿の口からはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁという長い溜息が漏れる。
「スーパーだ。清麿。ついてこい。」
歩こうとしたら手首を握られる。 ?
「デュー、そっちは反対方向だって。」
…………
「清麿、連れて行け。」
「はいはい。」
言いながら、清麿は手をしっかりと握って歩き出す。
俺はそれに付いていけばいい。そうしたらスーパーにでもどこにでも行ける。