長編小説

□鬼執鬼終
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育つ、闇


 わたしは拒絶されたのだ。
 その瞬間に生まれたのだ。


 人の子は望まれて生まれてくる。
 わたしは、まず否定されて生まれた。


 人の子にとって、「親」は自身を認めてくれる、護ってくれる、愛してくれる、そして自身も同じように愛情を返す存在。
 わたしにとって、「わたしを生んだ人間」は、わたしを世界に存在させてくれた存在であると同時に、わたしを拒絶した存在。


 否定されなければ「わたし」は生まれることができなかったのだが、生まれる為に存在を拒絶されなければならないとは。


 ──なんとも皮肉な話だ。


 この自分を「いらない」と。
 何よりもまず「嫌悪」したと。
 そういう事ですか?


 ──まったく笑わせる。


 ああ理不尽だ。
 気分が悪い。


 「お前」なんか、こっちから願い下げだ。


 それじゃあ貴方様は、大層ご立派な人格でいらっしゃるんでしょうね。この「わたし」を否定したからには。
 それにしても、自分達の「親」になる輩が後を絶たないのはどういうわけだ?


 うざい。


 そんなに「自分」が嫌いなら、とっとと手首でもかっ切ればいいだろうが。


 ああ腹が立つ。
 いらいらする。


 ──でも、まあいい。


 わたし達はわたし達で楽しくやっていますから。貴方様方は、どうぞそのまま生み続ければいい。
 でも、生んでも生んでも生み足りないだなんて、一体何を肯定して生きているのでしょうか。


 ────そんなに、嫌いか。


 それなら安心していいですよ。
 必ずあなたをみつけてみせるから。



 その時には。



鬼執鬼終 [0]
了。

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