小説■第六巻■

□男子高校生の非日常
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午前8時過ぎ。
泉孝介は栄口と東京駅の東海道新幹線改札口で別れ、ホームへ駆け上った。
8時10分発博多行きに乗車する為だ。
この新幹線を逃すと全ての計画が水の泡になってしまう。
いや、この新幹線だけではない。
これから利用する全ての交通機関に於いて、予定通りの時刻にきっちり乗らなければならないのである。


泉は17番線ホームに上ると、既に待機している博多行きのぞみ15号の自由席車両に乗車した。
座席のある車内には入らず、目の前の閉じている方のドアに凭れて泉は一息ついた。

ドアの窓から外を見ると、反対側のホームの下で作業員が行き来しているのが見える。
まるでこれからの泉の小旅行を表しているかのようにせわしなく…。


すぐに新幹線は出発した。
もう一度反対側のドアの窓から外を見ると山手線や京浜東北線が走っている。
何気なく泉はそれらの車内の人々を観察する。意味も無く。

…そして東京駅を出発して6分後、新幹線は品川駅に到着した。

『よし!行くか!』

品川駅に到着して、泉はすかさず新幹線を降りる。
小走りでエスカレータを上がり、JR在来線との南のりかえ口を使って改札を出た。
すぐに右折して真っ直ぐ突っ切ると、京急連絡口が見える。

泉はJRの乗車券を京急の改札口に投入し、続いてPASMOをタッチして自動改札を通った。

ここは既に京急のホーム。
電光掲示板を見ると8時28分発の三崎口行きに乗れそうであった。
予定通りである。

これに乗れば京急蒲田駅で降りたホーム目の前に停車待ちしている、羽田空港行きに乗り換えられるはずだった。


電車が到着するまでの5分少々、泉は売店で缶コーヒーを買うと、それを一気に飲み干し一息ついた。

予定通りの電車に乗り、京急蒲田駅で羽田空港行きの電車に乗れれば、あとは10分ちょっとで羽田空港の国内ターミナル駅に到着することが出来る。


泉は頭の中で経路を確認する。


羽田空港の駅に着いたらANA側の第2ターミナルに向かってエスカレータを駆け上がる。
改札を出て斜め左に向かい、更にエスカレータを使って2Fの出発ロビーに向かう。
既にネットで座席予約までしてあるので、チェックインカウンターに寄らずに保安検査場に行けばいい。
2次元バーコードのついているeチケットをプリントアウトしてあるのでスムーズに通過出来る筈だ。
あとは9時15分発のANA3843…スターフライヤーとのコードシェア便に搭乗すれば、無事福岡空港に11時20分に到着出来る予定である。


何度もシュミレーションした行動を頭の中で整理していると、泉の乗るべき京急電車が京急品川駅に到着した。


空港駅に到着してから飛行機の出発まで30分。
少なくとも15分前までには保安を通らなければならないから実質15分。
泉の勝負はまだまだ続く。
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