小説■第六巻■

□男子高校生の非日常
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──オレは大宮に6時43分に到着します。 18:10


18時10分、泉からのLINEが栄口のスマホに入ってきた。
東京駅でJR在来線に乗り換えてからLINEを打ったのであろう。


──OK!改札前で待ってるね! 18:11


栄口は泉にLINEを返信する。
すぐに既読がついた。


『…考えすぎ、か。』
栄口はカフェでコーヒーなどを飲みながら独り言を呟いた。
そして今度は水谷から入ってきたLINEを見返す。


──愛しのゆ〜とへ
  博多駅を今出たから、大宮に夜の7時18分の予定だよ♪(゚∀゚)
  すっごく時間かかって疲れるけど、はやくゆ〜とに会いたいな♪ 13:35


13時35分に博多を出てLINEをしたということは、13時32分の新幹線に乗ったと思われる。
栄口はスマホで時刻表を丹念に調べ、メモに書き出しながら考察した。

13時32分博多発の新幹線は東京駅に18時33分に到着する。
それから上野東京ラインに乗り換えたとして、東京駅発が18時46分。
すると大宮着が19時18分となる。
整合性が取れている。


栄口はもしかしたら、泉は水谷に会いに行ったのではないかと一瞬疑ったのだ。
だがしかし、泉は今日、朝の8時10分の新幹線に乗ったのである。8時過ぎに改札を通ったのを見たから間違いないであろう。
8時10分に東京駅を出る新幹線は博多駅に13時11分に到着する。

水谷家が13時32分の博多駅発の新幹線だから、会えないことはない。
だが、21分で何が出来る?
しかも相手は家族同伴なのだ。


『それに…無理だ』

栄口はもう一度泉のLINEを見返す。
18時43分に大宮に到着するとある。
本当に泉が18時43分に大宮の改札を通って自分に会うことが出来れば、それはつまり、博多駅を少なくとも12時32分には出発しなければならないことになる。

泉は博多到着が13時11分だから、物理的に無理であることが分かる。

『ふー…』
栄口は大きくため息をついた。
自分の嫉妬深さにたまに嫌気がさすことがある。
だがしかしそれは水谷のことが好きで好きでたまらないから。
そして泉の妖艶さに嫉妬しているから。泉が水谷を誘惑しているのではないかと勘ぐってしまうから。

だから本当は泉は名古屋に行くのではなく、自分を出し抜いて水谷に会いに博多に行くのではないかと思ってしまったのだ。

『ホント…バカw』
自分で自分を笑ってしまった。


栄口はカフェの時計を見た。
あと10分ほどで泉が大宮駅に到着する。
栄口は会計を済ませて改札に向かった。
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