小説■第六巻■
□オオカミ少年とエロ王子
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『こんにちはー!』
阿部旬の家に着くと、栄口少年が元気よく玄関先で挨拶をした。
泉はその様子を見てきちんと躾がされてるなと思う。
自分もまだ高校生なのに、まるで親目線になっていることに一人苦笑する。
そんな栄口少年に旬は
『あ、今日は誰もいないよ?親とかデパート行ってるしタカヤは三橋さんとこ行くって言ってた。』
と言った。
『え?阿部と三橋って休みの日に会ったりする仲なワケ?』
泉はそれに驚いた。
『う〜ん、どんな仲かは知らないけど、よくバッテリー的な話をしに行くみたいだよ?』
旬が答える。
『あ〜…そ〜ゆ〜こと。』
泉は納得した。投球オタクの三橋と捕手バカの阿部なら理解出来る。
『ま〜そんなワケでご遠慮なく〜♪』
どことなく機嫌のいい旬は二人を自分の部屋へと通した。
そして旬はキッチンに向かってお菓子やジュースなどを用意しに行った。
旬の部屋に栄口少年と二人になった泉は沈黙が流れないように話題を探した。
しかし
『泉さんはセンターメインですよね?ショートとかやります?』
などと栄口少年の方から話しかけてくるのであった。
『あ〜…ショートはあんまり経験ないかな…栄口クンはショート?』
泉がにこやかに聞くと栄口少年は顔を赤らめて
『…あ、そうです//』
と答えた。
その純朴な雰囲気に泉は思わず温かい気分になる。
『ショートなんて花形だね☆すごいね〜♪』
と褒めれば
『そんなことないです//』
と更に顔を赤くして俯くのであった。
『なになに〜?楽しそうだね☆』
そこに旬がジュースやお菓子をお盆に乗せて部屋に入ってきた。
『野球の話があれば盛り上がるからね〜w』
泉は笑って答える。
テーブルの上の雑誌などをよけて、旬がお盆を乗せやすいようにした。
『野球話か〜…俺は休みの日は野球から離れたい派だな〜w』
笑って旬は言いながら、グラスにジュースを注ぐ。
三人はひとしきりお菓子とジュースを楽しむ。
休みの日は野球から離れたいと言っていた旬だが、結局リトルリーグの話とか部活の話に花が咲く。
結局旬も野球大好き少年なのだ。
『そろそろゲームでもする〜?』
そんな中、口にお菓子を頬張りながら旬が言った。
『はい!』
すると栄口少年が目を輝かせて大声で返事をした。
『旬クン、オレも新作見てみたい☆』
泉も純朴な栄口少年に影響されて昔の無邪気な頃を思い出しながら素直に言ってみた。
『はいはい今出すよ〜♪』
そしてなんだか楽しそうな旬はテレビの下の棚からソレを取り出したのだった。
『え///阿部…さん//』
栄口少年が阿部旬の手にしたモノを見て絶句している。
目を大きく見開いて口をあんぐり開けている様子に、泉は奇妙な胸騒ぎを覚えた。
そして泉はゆっくりと旬の方に振り返る。
すると
『今日はこっちのDVDを鑑賞ゲームしようかと思いま−す♪』
なんて言いながら旬が手にしているモノ。
それは
『なんでここでエロDVDが出てくんだよ!』
泉が突っ込みを入れる。
そう、阿部旬が手にしていたモノとは
艶かしく妖しい表紙のDVD。
まさしくエロDVDそのものだったのである。