小説■第六巻■

□ストロボ・エッチ
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『やっぱ似合うわ〜♪泉、イイ!!』
叶は大げさに泉を褒めた。
叶の持っている三星学園の制服のサイズは泉にピッタリであった。


それもそのはず。
泉と叶は身長も体重もほぼ同じと言っていいくらい似た体型なのだ。

泉の身長が168なら、叶は169
泉の体重が55なら、叶は54

叶の制服がピッタリのはずである。


『マジ?…ちょっと照れる//』
言われながらまんざらでもない様子の泉は頬を赤く染めてそう言った。

『そのままうちの学校行っても馴染む馴染むw』
叶はニコニコ顔で泉の制服姿をベタ褒めした。
『叶はやっぱしっくりきてるな。着慣れてる〜って感じ?』
対して泉も叶の姿を見て褒める。
お互いがお互いを褒めあい、なんだか可笑しな光景だ。


叶はイケメンだ。
…泉はいつもそう思っている。
そのイケメンの叶が、オシャレな制服を着こなして颯爽と歩く姿を想像する。
きっと女子にモテモテだろう。


『叶ってさ〜…女子とかに告られたことある?』
泉は鏡に映っている叶の顔に向かって小首をかしげて聞いてみた。

『え??…あっ///ま、ま〜…あるけど?』
突然の質問に叶がうろたえた。
だけど顔を赤くしながらも正直に答える。

『マジか!やっぱな〜…激しく似合ってるもんその制服。』
泉は天井を見上げてそう言った。
『でも泉だって女子にモテるでしょ?』
そんな叶の質問に泉は少し言葉に窮してしまった。


女子ばかりか、男とだってヤってます。


…そんなことを正直に答えられるはずもない。


『ま〜そりゃ〜無いことは無いわな。』
泉は曖昧に答えた。

そんな泉の内心を知ってか知らずか叶は声の調子を変えて
『そうだ!このまま街まで出て行かね?』
と提案するのであった。


『え”??それは…さすがに勇気ないですけど?』
泉は躊躇する。

『え〜??大丈夫だって〜!休みの日にそうそう学校の奴らには会わないしさ、それに泉この制服着てても全然違和感ないもんw』
叶は泉の腕をぐいぐい引っ張りながら言う。
その様子があまりにも萌えを発していて、泉はドキドキしてしまった。


『ま、ま〜…そ〜ゆ〜のコスプレみたいで興味ないこともないけど…でもな〜…!!』

珍しくはっきりしない泉の言葉に叶が激を飛ばす。

『大丈夫!何ビビってんだってw堂々としてれば全然OK♪』
などと言いながら指でグーサインを出す。
『べっっ別に//ビビってんじゃね〜っけどっっ!!』
変なプライドが泉の正常な判断を鈍らせている。


だが実際ビビってると言われてイイ気はしない。

泉は覚悟を決めた。


『よし分かった!これ着て出よう!』
『やった!そうこなくっちゃ♪』


そうと決まると二人は制服姿のまま、外へ出ることにした。





玄関を開けると外は快晴であった。
一歩外に踏み出すと、いつも着ていない制服を着ているからか、まるで別の世界に舞い込んだかのような錯覚に陥る。

道を歩く人の何気ない視線ですらとても気になる。


しかしどことなく新鮮で、なんとなく甘美な思いがする。
非日常的な風景に見える街並みが抑制された心を解き放つのだろうか。


そして二人は高崎駅までやってきた。
乗りなれたJRですら他校の制服姿の泉には冒険であった。

しかしここは群馬。
学校の友人などいるはずもない。



駅の西口に降り立った二人は右手に見えるファッションビルに向かった。
もうすぐ閉店するというその商業施設と、向こう側には百貨店も見える。

そちらに向かって歩いていき、服でもぶらぶら見ようと思ったのだ。


大きなペデストリアンブリッジをくぐって道を渡る。
右手にモントレービルを眺めながら進むと、左手にビブレがある。

閉店間近の高崎ビブレはその後、イオンのショッピングモールになるらしい。


セール中のビブレは、若い高校生たちにとってありがたい価格になっているはずだ。
二人はうきうきとその中に入っていった。
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