小説■第六巻■

□男子高校生の非日常
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人生決めるその瞬間、自分に嘘をついてはいけない

今日のトリックは時刻表
時間との戦いで栄口を騙しつくせ

たったひとつの抜け穴見つける
見た目はショタっ子、頭脳はアダルト
その名は、偽童貞イズミ



【男子高校生の非日常】



日曜日の朝8時。東京駅は大混雑していた。
休日を旅行先で過ごすであろう家族や、ディズニーランドに向かうカップル、スーツのサラリーマン、団体旅行のグループ、多種多様な人々が先を急いで小走りに行き交う。

泉孝介は青い切符を片手に、東海道新幹線乗り場に来ていた。


『ねぇ、何時の新幹線なの?』
隣にいる栄口が泉に聞いた。
『…8時10分だな』
泉が答える。
と、言っても今日は栄口と新幹線に乗るわけではない。

泉は名古屋に出張に行った父親に書類を持っていく…という理由でここに来ている。
それを聞いてたまたま暇を持て余していた栄口が、東京駅までぶらぶら遊びがてら見送りに来たいと言ったのである。

『それにしてもこの時代、書類忘れたならメールとかで送信すればいいのにね?』
栄口がふと思ったことを口にした。
『オレもそう言ったんだけど、明日の月曜日にはどうしても印鑑の押してある原本がいるんだと。親父のおっちょこちょいさには嫌気がさすぜ。ま、名古屋でネット友達と会うことにしたからいいんだけど』
『今日は何時に帰ってくるの?』
『夜の6時半くらいに大宮かな』

『…ねぇ、大宮着いたらまた会わない?水谷が夜の7時半前に帰って来る予定だから一緒にお出迎えしようよ☆』
『えぇ?面倒臭ぇな〜…一人でお出迎えしろよ』
『え〜?いいじゃ〜ん!お願い♪6時半に大宮に迎えに来るから〜♪』


そうなのだ。

栄口が暇を持て余している理由。
それは、水谷が昨日の土曜日から家族で親戚の法事に出かけてしまっているからなのだ。
飛行機が苦手という水谷の父のお陰で、新幹線で博多まで行かなければならないと水谷が愚痴っていた。
昨日の朝早くに水谷家は東京駅を出て博多に行き、法事に参加して一泊。
本日帰ってくるらしい。


『水谷家は家族で帰って来るんだろ?邪魔なんじゃね?』
『え〜でも俺、水谷に会いたいし〜…ね!待ってるから!ほら、時間だから行って!』
『あ、やべ!』


時間は既に8時を廻った。
この新幹線に乗り遅れてはならない。

『仕方ねぇな…また到着の時間決まったらLINEするから』
『やった!泉ありがと♪いってらっしゃ〜い!』


こうして半ば強引に、泉は今日、18時半には栄口と再び待ち合わせをし、19時半前に到着するという水谷を一緒にお出迎えすることになってしまったのである。



だがしかし、これは泉の中では予測通り、計算通りのことである。
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