小説■第六巻■

□禁キョリ恋愛
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秘法の指輪
エロードリング

今を生きる賢者タイムは
その疼きを股間に宿し
絶望を欲望に変える




【禁キョリ恋愛】




『お次の方こちらのレジどうぞ〜♪』

『…あ。』
『…あ。』


今、泉孝介はマクドナルドで腹ごしらえをしようとレジで並んでいた所であった。
日曜日のランチタイムは混雑していて、レジ待ちの客で行列が出来ていた。

泉は本屋で購入した月刊アフタヌーンなどを立ちながら読みつつ列に並んでいたのだが、
レジの男性アルバイトに呼ばれたのでそちらに向かったのだ。

そして出合った思わぬ男。


『てゆ〜か何で慎吾さんがバイトしてるんですか。』
泉はすかさずマクドナルドの制服を着た島崎慎吾に突っ込みを入れた。

受験生の島崎はこの時期、勉強に躍起にならなくてはいけないのではないかと思ったからだ。


『お客様ご注文をどうぞ〜♪』
しかし慎吾は泉の突っ込みなど意に介さないようにアルバイト声で接客を続ける。

『あ、海老フィレオのセットとチキンナケッドで…』
あまりに自然な慎吾の態度に思わず泉も普通に注文してしまった。

『ドリンクはどうされますか?』
『あ、コーラで。てゆ〜か何でバイトなんてしてるんですか?』
『お客様、私もうすぐで仕事上がりますので、それまで店内で食べながらお待ち下さい♪』


あくまでもにこやかに対応する慎吾に接客業の極意を見た!
…なんて感動している場合ではない。


泉は海老フィレオのセットとチキンナゲットを乗せたトレイを持って席を探す。
すると丁度奥のソファから立ち上がろうとしたOLがいたのでそちらに行き
『ここ、あきますか?』
とニコやかに聞いた。

するとOLは泉の顔をふと見てニッコリ笑い
『どうぞ』
と席を譲ってくれるのであった。

泉は洞察力が鋭い。
この時もこのOLが自分に好意を持ってくれたと確信した。
最初不審げな表情でこちらを見るのだが、泉の顔を確認するとすぐに表情が笑顔に変わる。
こういう体験は泉にとってしょっちゅうあることなのだ。

だから泉は最大限に自分の可愛い所を利用し、
『ありがとうございます♪』
と、精一杯愛想よくお礼を言うのだ。
そうすればそのOLにひとときの幸せを与えることが出来る。



『オレって性格悪いのかな?』
ついつい小さな声で独り言を呟いてしまった。
ハっと気がついて隣のソファの女子大生を見る。

本を読んでいた女子大生がふとこちらを見て一瞬目が合ったが、
この人もニッコリと泉に微笑み返し、再び本に目を落とすのであった。


泉はスマホを取り出してイヤホンをつけ
アプリを起動して音楽を聴き始める。

そしていつもするようにポテトをナゲットのマスタードソースにつけて食べ始めた。


窓の外を見ると往来を多くの人々が行き交っていた。
泉は音楽を聴きながらぼうっと外を眺めている。
人間観察が大好きな泉は道行く人々を観察し始める。
これが泉の趣味の一つであった。


海老フィレオにパクリパクリとかぶりつき、
ナゲットやポテトが勢いよくなくなっていく。

気づけば隣の女子大生よりも先に食べ終わっている。
泉は再びアフタヌーンを開いて漫画を読み出した。







『へいお疲れ〜♪』
あれから20分ほど経っただろうか。

コーラを飲みながら漫画を読んでいる泉のもとへ慎吾がやって来た。
既に制服から私服に変わっている。


『終わりましたか?』
泉は耳につけていたイヤホンを取ってかばんにしまい込んだ。

『もうへとへと〜w』
慎吾は泉の隣にへたり込む。

『どうしてバイト…』
『ストーーーップ♪とりあえず出よ☆』


泉は慎吾に何故バイトをしているのか聞きたかったのだが、
慎吾はそれを制止すると、まず店を出ようと言う。

泉は残りのコーラを飲み干すとゴミ箱にゴミを捨て、慎吾と共にマクドナルドを後にした。
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