男のロマンと言うものは、好きな奴に押しつけてこそ己の中で結び付けられ、喜悦や感動を感じれるものだと俺は思う。
例えばナース服だとかメイド服だとか、そういったちょっとばかし現実的でないものを試してみたいと思うのは、可愛い奴だったりそんなのが似合う奴だったりするのだ。
それが、自分のタイプとかけ離れていたり、更に悪くいえば口臭のきつそうな半世紀生きたオッサンだったりすれば?(あれ?なんで口臭のきつそうなオッサン?)
そんな奴が裸エプロンとかなんやらしたって、結局は自分にとって興味のない事なのだからどんなに世の男どもに興奮と言う名の喜びを与える格好やアイテムを持っていても、たちどころにその興奮は冷めきり一瞬にして「気持ちが悪い」としか思えなってしまうはずだ。
しかし、それが好きな奴だったら?
考えてみろ、この世で一番愛してるともいえる人物が自分の理想の姿をしているんだぞ。(多少嫌がっていてもそれはそれで良い)
これ以上の幸せは味わえないだろう。
そして俺は、これこそが男の最大のロマンだと思うのだ。
さて、ここで問題です。
目の前にはしっかりと学ランを着込んで、そのストイックな感じがなんとも言えない肌の白い艶やかな黒髪の男の子、俺の愛しの土方十四郎君がいます。
そして、俺の学生カバンの中にはなんとなく自分と同じ匂いのする沖田君から貰ったばかりの可愛い可愛い桃色ボーダーの、紐パンツが入っています。
この状況から俺は何をすべきでしょう。
ヒントは、ここは俺の部屋でありもちろん家には俺たち以外誰もいないし当分帰ってくる気配もありません。
さあ、正解は!
「正解は、この紐パンツを目の前の土方十四郎君に穿かせてあげ…、ぶっ!」
「どこが正解じゃアァアア!?何を誰に穿かせるだって!?あぁ?」
期末テストの二週間ほど前のある日、お前は出席日数が足りないからそれなりの点数を取らなければ留年するぞ、という事実を担任のハゲに宣告された俺は顔を真っ青に染め上げながら即座に、幼なじみの土方に助けを求めた。
ちなみにそれは小二三時間前である。
しかし、もともと集中力など己の頭には備わっていないため、ペンを持って三十分程経つとそんなこのに俺の脳内は犯されていたのである。(もちろん俺は悪気などない)
そしてこんなことを考えているほうが頭の回転がしっかりしているのではないか、と思っていたところせっかく教えてやっているのに、と苛々した土方にどつかれてしまったのだ。
「イタイ…さ、さすがに参考書の角で顔面を目指すのはよくないと思います。」
「テスト勉強をしているというのに、破廉恥なことに精一杯頭を働かせているのは最低だと思います。」
拳でなく、古典の参考書で殴られたダメージはそれなりに大きく、殴られた箇所を擦りながら涙声て縋ってみれば、視線すら交わせられずに冷たくそう言い放たれてしまう。
「……、だってここわかんねぇんだもん。」
「…、ここってさっき考え方教えてやったとこだろ。」
「忘れた。」
ペンをくるくると指先で遊ばせながらボソリと呟いてみれば、どこだと言わんばかりに顔を近付けてくる土方。
問題文を一通り読むと、一つ疲れたように溜め息を吐き、仕方ないといったようにまた一から俺に丁寧に教えはじめてくれた。
そのおかげで少し俯いたため、長い前髪が土方の前方、つまり俺のいる方向の視界を奪った。
先生、これはチャンスです。
「はあ…、ここは現代語訳では『ので』っていう理由・原因を表すから……っ!なにすんだ!」
「ん?男のロマンを果たすのです〜」
「はあ?テメェ、ここわかんないんじゃねぇのかよ!ってか離せっ!!」
「嫌です〜、俺が今一番知りたいことは桃色ボーダーのパンツと土方の朱色に染まった体とではどっちが色鮮やかなのかなんです〜」
「んなもん知るかァアア!!ってかそのしゃべり方むかつくんだよォオオ!!…、おい!マジでやめろっ、て!……っんむ!」
赤ペンでトントンっと問題の箇所を示しながら律儀に教えてくれる土方に、ゆっくり口元を釣り上げながら俺は彼の背後に回った。
そこで腰に手を回しがっちりと体をホールド。
さりげなく指先はベルトのバックルに伸ばします。
キャンキャンとうるさい口は自分の唇で塞ぐことにした。
そうすれば、土方はどんどん力が抜けて抵抗する力も弱くなっていくことを俺は知っていた。
カチャと音がしてベルトが外れた。
「こら!おまえ、勉強…!」
「ああ、勉強ね…」
「!、はあ…。そうだよ、お前今回点数とんねぇとやべぇんだろ?」
「だね〜…、じゃあまずはこれの穿き方勉強しよ?土方、わかんないでしょ。」
「…なっ!」
するっ、と下を脱がしにかかれば些細な抵抗と一緒に勉強、という単語が呟かれる。
その台詞にそういえば、といった顔をして一旦体を離してやれば安心したのか土方の体の緊張が一気にとけ、自分を落ち着かせようとふうっとゆっくり息を吐いたのがわかった。
しかしそんな安らぎは、俺がカバンから取り出した一枚の布切れによって一瞬にして消えてしまったのだが。
「やだっ!離せ!!」
「はーい、ワガママ言わない。ほら土方はやく脱いでよ。」
今度は壁に追い詰め、前から土方のズボンを脱がそうと試みた。
しかしそれはベルトを外しただけに終わり、ちらりと土方のパンツが見えるだけでなかなか紐パンを穿かせることができなかった。
できれば下をすっぽんぽんにして立ちあがった土方にゆっくりと、(すでに結ばれている /もちろん土方自身が結んだ)紐パンに足を通させたかったのだが、仕方がない。
俺は土方を肩に抱き上げ、そのまま片手で一気にズボンをずり下げてやった。
「うわっ!?…ちょ、銀時!や、!落ちる…!」
「言うこと聞かない土方が悪いんだよ。」
「あ、やだあ!」
「ほら、穿かせてあげるから。」
そのまま土方をベッドの上におろし、プラプラと紐パンを見せ付けてあげながらそんなことを言ってあげた。
穿かせるのもいいけど、穿かせてあげるのもいいと僕は思いまーす。
学ランの上の裾を必死に引っ張りながら睨みつけてくる瞳を真っ直ぐに受けながらそんなことを思った。
「はい、腰をあげてくださーい。」
「んっ、いやだ…、ふざ、けんな…!」
「あらあら、まだそんなこと言うの?……あぁ!もしかしてTバックのほうが良かった?それかもう少し大人なデザインとか…」
「違うわァアア!!誰がそんなっ…!ひぁっ!!」
「ごめんね、でもこれ銀さんが選んだわけじゃないのよ。今度はちゃんと土方にピッタリのいやらしいパンツ、穿かせてあげるから。」
まだ文句を垂れる土方に微笑みかけながら、なかなか浮かない彼の腰を持ち上げてやった。
土方の桃尻に触れそこから上に浮かせてやると、期待どおりの可愛い声を土方は出してくれて気分かよくなり少しだけ手に力を込めて撫でまわしてしまった。
「んぅ、や、ぎんと、やだ!!」
「泣かないの。もう少しなんだから。」
涙を浮かべ始めた土方に、少しいじめすぎたかと反省しながらも動きは止めず、空いた手であとは結ぶだけの紐パンにそっと触れた。
ゆっくりと焦らすように、両サイドに蝶をはばたかせていき、たまに唇のそばにある土方の耳に舌を入れたりして遊んでいた。
その度にイヤイヤと首を横に振る土方は、俺の理想だなとか思ったりしていた。
「はい、完成。」
「っ…、」
ベッドの上に座る、上は一つの乱れのない学ラン。下は桃色ボーダーの紐パンツから白い生足がのびている土方の姿は、上と下のあまりのギャップにめまいがしそうだった。
「上はしっかり着てんのに下は紐パンって…、やっぱ男のロマンだよね。うんうん。」
「もういいだろ!早くズボンよこせ!!」
ジーッと土方の姿を舐めるように見つめ一人納得していると、もはや半泣きになって叫ぶ土方と目が合った。
「何言ってんの。こんな可愛いのに。あ、土方のほうが綺麗な桃色だ〜」
「……っ!」
こぼれる涙を舐めとりながらそんな事をささやいてやれば、案の定土方は顔を真っ赤に染め上げ口を開いたり閉じたりパクパクしていた。
それがなんだかすごい可愛くて、思わず唇を奪ってしまった。
絡めて舐めて吸って咬んで。そんなことを繰り返していれば苦し気に土方の眉ひそまり、ピクリと肩が揺れた。
そんな小さな動きを楽しみながら、この紐パンを譲ってくれた沖田君に感謝し、次はやはり紫のTバックだろうか、などとこれから二週間後に控えている留年がかかっているテストのことは一切考えず、重力に沿って土方を押し倒し甘い桃色の世界へと俺は堕ちていった。
つまりは君だから。
(これほど勝るものはない)
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