Wonder land

□6.数合わせ
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拾うと、何やら白いプラスチックの・・・。

「ベッドの下あさったって厭らしい本とかはでてきませんよ」

「うあっ!?」

いきなり耳元で声をかけられ、ビクッとする。
いつの間に・・・。

「しっ、白ウサギ・・・」

「いい反応です」

後ろを向くと、にこにこしながら白ウサギがこちらを除き込んでいた。

「そんなの、探すか!」

呆れながらベッドに座ると、白ウサギが向かい合うように片膝をつく。
そして千隼の顎を軽く上げた。

「ふふ、個人授業受けに来たんですよね」

「っ、違う!」

もう片方の手が千隼の腰にまわると、千隼の身体が少しビクッと揺れた。
千隼に冷や汗が流れる。

「やはり個人授業はセオリーどうり保健体育でいきましょう」

白ウサギはそう言うと、楽しそうにこっと笑みを浮かべた。
顔が、近い。

「離せっ!!」

慌てて白ウサギを突き飛ばす。
思いのほか力が入ったのか、白ウサギはそのまま床に手を着く形になった。

急いで立ち上がってドアに向かう。

「何か、聞きたいことがあるんじゃなかったんですか?」

ドアに手をかけた瞬間、その一言でピタッと手が止まる。

振り向くと、不適な笑みで白ウサギが手招きしていた。
タメ息をついて、警戒しながらも戻る。

「最初会ったときの、大蛇について、なんだが」

「・・・あの蛇の巣には近づかないで下さい」

白ウサギが冷たく言い放つ。
やはり、あの巣には帰るための何かがあるのだろうか?

「あの巣に帰るためのなんかがあるなんて気付いてる。
アタシが帰ると不味いんだろ?」

「勘違いしないで下さい。代わりは腐るほどいます」

吐き捨てるように言われ、こういうやつなんだと実感する。

「じゃあアタシが巣に近づこうと関係ないじゃないか」

千隼がそれだけ言い捨てて部屋を出ていくと、白ウサギはそっとタメ息をついた。



千隼はふと、ポケットの中に何かが入っていることに気付く。

あの時、持ってきちゃったのか・・・。

握った手の中にあったのは、白ウサギのベッドの下にあった白いプラスチックの・・・ギターピック。

アタシも少しギターやってたことはあったからわかる。
ピックの裏には“E・N”と書いてある。

だがこの世界の住人であるはずの白ウサギには自分の名前がわからないはず・・・。
それに“白ウサギ”だとイニシャルは“S”だ。

誰かのをとったのか、それとも・・・。
まぁ、ともかく、せっかくの自由時間だし、情報収集がてら街に出よう。



「千隼?」

色々並ぶ店をぼーっと見ながら歩いていると、後ろから声をかけられた。

振り向くと驚いた顔をしている男性と目が合う。

外ばねの茶髪に、ちらつくアクセサリーはまさにチャラそうなお兄さん。

チャラそうな、面倒臭そうな。
・・・よし、見てみぬふりをしよう。

「待てよ」

素通りしようとすると、やはり引き留められる。

「ナンパなら間に合ってます」

「いや、意味わかんねーし」

不覚にもつっこまれる。

どうやら簡単には去らせてくれないらしい。
名指しで言っているのだから人違いですなんかも通用しないだろう。

「千隼ちゃん、俺覚えてない?」
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