Wonder land

□3.闇
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「12人でしか・・・?」

「何故だか知りたいですか?」

「・・・いい。どうせただじゃ教えないんだろ」

千隼は少し考えた後に言う。

白ウサギは食えないやつだ。
油断できない。

「よくわかってるじゃないですか」

ちょっとつまらなそうに、でもにっこりと言う。

千隼としては白ウサギの思い通りにいくのは面白くない。
利用されるなど、まっぴらだ。

「でも、魔術くらいは教えてくれるだろう?」

千隼の一言に白ウサギはにっこり笑う。

「こちらを」

白ウサギは二冊の本を机に置いた。
魔道書。
またもや胡散臭い、夢のようだ。

「あの世界で生きた人間には胡散臭くてしかたがないですよね、でも、理解してみて下さい。
魔術など、勉強のようなものです。まぁ、人それぞれ相性やセンスがありますがね」

「勉強、か。まさにそんな感じだな」

魔道書を手に取ると、ぱらぱらとめくって見る。
中には難しそうな文字やら図形やらがびっしりと書かれていた。

「うわ、難しそう。頑張んなきゃ」

千隼の手元を令が覗き込んで、眉を寄せた。

「まぁ魔術は通常独学で身に付けるものですから、気が向いた時にでも頑張って下さい」

白ウサギはそう言うと、部屋を出ていった。



あれから3日ほど経つと、千隼たちも少しずつ世界に馴染んできていた。

ブワァァァ・・・

千隼の手のまわりに風がおきる。
あの時白ウサギがやったように。

「・・・驚きました、上達が早いですね」

白ウサギが感嘆の声をあげる。

魔術は基礎さえ理解すればそれぞれのセンスでどうにでもなる。

だが、その基礎を理解するのがまた難しいのだ。

基礎を理解したところで思い通りに行くわけでもなく、センスも磨かなくてはいけない。

「何でそんなのできんの・・・?僕なんて火を出すのがやっとなのに」

令が呟く。
火を出すといってもぼわっと少しでただけで消えてしまう程度だ。

「通常はそんなもんですよ。千隼さんの上達が異常に早すぎるんです」

白ウサギは苦笑いをして言う。

「今日はこれまでにして宿に戻りましょう。夕食の時間です」



食事の手を止め、唖然としてしまう。
机の上に並ぶ、皿、皿、皿・・・

「あ、追加でBセット5人前お願いします」

にっこり、白ウサギが言う。

「なんつー食いっぷり・・・」

「ははは、良く言われます」

そうこうしているうちに食事は白ウサギの腹に入っていく。
しかも驚くことに食べ方に下品さを感じさせない。

「いつもそうなのか?」

「いえ、いつもではないですね」

そういえば前の食事では普通だったので、多分、普段はそこまで食べないのだろう。

しかし、何という量・・・。
見てるこっちの腹まで満たされる。

こいつの胃、どっか異世界にでも繋がってんじゃなかろうか・・・。
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