Wonder land

□2.12の針
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「真面目に答えろ」

「そんなに照れなくても」

千隼がこれだけ低い声で睨み付けても白ウサギは動じない。

一体どういう神経してるんだ・・・。

「わかった、理由はいいから、帰る方法だけ教えろ」

「つれないですねぇ。帰る方法・・・ですか」

白ウサギは考える仕草をとる。
とりあえず今は帰れればいい、二人はそう思っていた。

「とりあえず宿でお話しましょう。とっておきました」



村にしてはいい方であろう、若干古ぼけた宿。

千隼の部屋で話すことになった。
千隼はベッドに、白ウサギと令は椅子に腰掛ける。

「で、帰る方法は?」

最初に口を開いたのは令だった。

「お教えしますが、一つ、条件があります」

にっこりと不適な笑顔で二人の前に人差し指をたてる。

「しばらく僕の言うことを何でも聞いてください。多分悪いようにはしません」

白ウサギは視線を千隼にむけ、話す。

「まて、何でもとか、多分ってなんだ」

千隼が構える。
まぁケンカして勝てる相手じゃないなんてさっきのでわかっているのだが。

不適切要素が多すぎる。

「僕もそこは納得できないね」

令は腕を組と、少し不機嫌そうに言う。

こちらは帰る方法と言う情報をたのんでいるだけなのに、一方的に要求されっぱなし、と言うのも面白くない。

「条件をのまないなら教えませんよ?」

「・・・いい、お前の言いなりになるくらいなら帰る方法くらい自分で探す」

千隼そう言い捨て、部屋を出ていった。

「ちょっ、神崎さん・・・」

令もそれを追いかけて出ていった。

「そう言ってられるのも今のうちですよ、千隼さん。
貴女は僕に頼るしかないのですから」

二人が出て行くのを見守った後、白ウサギが一人そっと呟いた。
口元に不適な笑いを浮かべて。



この世界の歴史、伝説・・・机の上にならぶ資料。

千隼が読み終わるとまた新たに令が良さそうな本を選んで千隼の元に持ってくる。

千隼はそれをぱぱっと読み、知識を吸収していく。

「よく集中力続くよね」

令は何冊か本を持ってくると千隼が読み終わるまで暇になる。

最初は令も読もうと試みたのだが、歴史などや難しい本が苦手な令は分厚い本を少し読むだけで頭が痛くなってしまうのだ。

そして無理に読むな、と千隼に気を使われ、現在にいたる。

我ながら情けない。
そう思いながらも令は机につっぷしていた。

「元々読書は嫌いじゃない。まぁ、こんだけ読めば流石に疲れてくるが・・・」

千隼は本を閉じて呟く。

ここにきてからこの世界について、そして帰る方法を調べるために何時間も本を読みっぱなしだ。

またおもむろに本を手にとり、そこで千隼の手がとまった。
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