Wonder land

□1.白ウサギ
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ガララッ・・・

「神崎!!」

ドアを勢いよく開けて教室に令が入ってくる。
令は転がっている木刀を手にすると、慌てて蛇に向かって構えた。

「富田、来るな!!帰れ!!」

千隼が令の存在を確認するなり叫ぶ。

助けにきてくれたのは嬉しいが、富田はあまり運動神経がいい方ではないし、なにより元々こんな得体の知れない巨大な蛇と戦うこと自体無謀だ。
前回は打ち所が良かったのかすぐに倒すことができたが、毎回そう都合よくいくわけもないだろう。

このまま2人でエサになるくらいなら、犠牲は少ない方がいい。

「早く行けっ!!」

そう言ってアタシは中々逃げようとしない富田を睨み付ける。

「君を置いて帰れるかよ!!」

令はそう叫ぶと、大蛇を後ろから木刀で殴りつけた。
大蛇は少し驚き、その鋭い目で令を睨みつける。

先程の攻撃はあまり効いてないようだ。

大蛇の標的が千隼から令に変わる。

「何やってんだよ、富田!!」

「やっぱ慣れないことはするもんじゃないな」

令は苦笑いしながら大蛇から後退る。
衝動的なものだから考えがあるわけでもない。
大蛇はゆっくりと令との間を詰めていく。

ガシャンッ

大蛇はいきなり首を振り上げ、それを振り落としてきた。
令はそれをなんとか避ける。

「っ・・・!!危なっ」

勢いで壁などにぶつかった大蛇のまわりになにやら色々な破片が飛び散った。

うわ、やっぱ凄い力だ。

大蛇が今度こそ仕留めようと体制をたてなおす。
アレに当たったらきっと終わりだ。

令は覚悟を決め、息を飲んだ。

大蛇がこちらに標的をさだめ、その巨大な口で令に噛みつこうとしたその時。

「後ろががら空きだ!!」

危機一髪で千隼の持った大き目のガラスの破片が大蛇の頭を貫いた。

大蛇は悲鳴とともに崩れ落ちていく。

「マジ、死ぬかと思った・・・」

息を整え、令が呟く。
千隼は少し呆れていた。

パチパチパチ

突如、拍手が聞こえる。

「いやぁ、お見事ですね、ゆっくり拝見させていただきました」

青年が白く長い髪を揺らしながらにっこりとした表情で入ってくる。

何となく、いけ好かない。
私服であるがため、生徒かはわからないが、まぁ、教員ではないのは確かだ。

「・・・変質者か?」

そう言って千隼が青年に軽蔑の目を向ける。
初対面で急に変質者扱いって・・・。
いや、確かに変質者っぽいけど。

「酷い言い様ですね、千隼さん」

「お前が観戦なんてしてるから・・・」

千隼は言いかけてはっとする。

「何でアタシの名前知って・・・!?」

神崎、なら富田がそう呼ぶからわかるが、なんせ名前呼びだ。
青年は面白そうにそれを見ている。

「知ってますよ。千隼さんのこと、いつもこっそり見ていましたから」

そう言われ、首筋に寒気が通る。

ストーカーか?

アタシはとりあえず警戒しながら令の後ろに隠れる。

「・・・いつもなんて冗談ですよ、そんな引かないで下さい」

青年は苦笑いをしながら手招きをしたり
それを聞き、千隼は令の後ろからでてくる。

「で、お前は何者なんだ?」

「そうですね、白ウサギとお呼びください。ワンダーランドにご案内しにきました」

白ウサギと名乗った青年が千隼にそっと手を差しのべる。
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