Wonder land
□19.動物扱い
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水晶にはアタシ達の世界とは少し違う、別の景色が映っていた。
エルフやら妖精やらドラゴンやらの存在するRPGのような世界。
シャルトルのいた町とは違うだろうが、世界は同じだ。
見ることのできる範囲は多少狭いが、アタシから見ると不思議に溢れている。
そんな世界を覗きながら軽く気になる人物をチョイスしてメモをとる。
念じれば映る人物の軽い情報くらいは手に入る。
この水晶、一見は科学的にもありえないし、色々便利なものにも見えるが、定期的に情報の更新をしているらしい。
まぁ、頭のイメージで情報を送れるのは楽なのだが・・・。
「気になる者は見つかったか?」
女王様が退屈そうに軽くあくびをしながら言う。
アタシは今、12人の中の足りない一人を補うため水晶を使い、人材を探していた。
アリスであるアタシにも、アタシを連れてきた英介のように人を招く事はできるらしいのだ。
「とりあえず、数人」
アタシは女王様に軽く返事をすると、女王様はこちらに来て、メモを除き込む。
「こやつらにした理由は?」
「まぁ、腕がたちそうなの、と言うのもあるな」
それと、芯は持っていても、ほとんど一人だから。
多分、これは英介が最初、アタシを選んで連れ出した時と同じ条件だ。
いなくなったからって心配される事も、心配する相手もいない。
わりきりやすい、というのもアレだが、この世界から出られるという保証はないのだ。
引きずり込まれる側には申し訳なく思うが、希望は少しでも持っていたいのだ。
「では、行ってくるがよい」
「ああ」
軽く呪文を唱えると、水晶が光だした。
目を開くと図書館にいた。
足元には一冊の本。
見覚えのあるその本は主に必要な人間をワンダーランドに引きずり込むのに必要なルートなのだろう。
制限時間は三時間。
それをこせば強制的に元の世界に戻される。
これを逃してしまえば次にどこかの世界に繋ぐのには一ヶ月は必要らしい。
しかも人数が揃えばまた他の世界と繋げなくなる。
ワンダーランドは何とあっても物語を完成させたいらしいな。
窓から外を覗けば水晶の中にうつしだされていた、とある町の景色が広がっていた。
「ん?」
その景色の中の一つの銅像に目を見張る。
気のせいだろうか?
・・・似ている、夢で見たあいつ、ロゼに。
そんなことを考えていると、ふと後ろから気配がした。
「ねぇ、君、本物の人間だよね?」
そう問いてくる声の主を振り返り目にすると、アタシは少し固まった。