Wonder land
□16.打ち首
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「言葉?
あ、あれかも・・・。“赤を裏切りし者より鍵を譲り受けよ”」
そう言ったのは優香。
あれ、とは女王の一族に語り継がれているらしいアリスに託す言葉のことだ。
「赤?」
「ハートの国のことじゃないか?」
千隼が首を傾げると、響が言った。
ここはダイヤの城の一部屋。
ハートの城に帰る前にシアンの言うところの女王に受け継がれる言葉を一度、優香にも聞いておきたかったのだ。
シアンの言うことが本当なら一応女王の一族になる優香もそれを聞いているはず。
そして出たのがあの言葉だった。
「裏切りし者と言うのは、ジャックのことでしょうね」
英介が響に続くように呟く。
「ジャックって?」
「千隼さんたちが来るちょっと前に一緒にここで働いていたんですが、騒動を起こし、追放されたんですよ」
そう言って英介は少し険しい顔をする。
その言い捨てるような感じな言い方からは、ジャックに対する嫌悪がにじみ出ていた気がした。
「ジャックは女王を裏切って何かを盗んだんだ。こいつそん時ジャックに刺されてさ。それが悔しかったのか結構根に持ってんだよ。ねちっこいよな〜」
アタシの怪訝そうな表情に気付いてか、響が軽く説明してくれる。
と、言うか仲間に刺されて根に持つのはねちっこい以前に、わりと当たり前だと思う。
「そのジャックってやつはどこに?」
言葉のとおりならアタシはジャックに会わなくてはならない。
「あれからあいつは行方不明ですよ。見つかってたらとっくに消してます」
「消すって・・・」
千隼は英介の物騒な発言に呆れる。
こちらとしてはジャックが消されていたのなら元も子もない。
危機一髪、ってとこか。
「後はハートの女王とスペードの女王だね」
「ああ」
千隼は令に軽く返事をすると、紅茶に口をつけた。
「さてと」
外はもう暗くなり、自分にあたえられた部屋でそう呟きながらベッドに転がる。
とりあえず明日にはこの国を出る事になっている。
まずはジャックの消息をつかまなければいけないだろう。
ここでアリスの物語を思い出す。
ジャック・・・きっとハートのジャックのことだろう。
物語でのジャックは女王のパイを盗み、裁判にかけられていた。
そういえばこの世界のジャックは、何かを盗んで追放されたんだったな。
パイって事もないだろうし・・・。
それに、物語では打ち首と言われていた筈だ。
何故追放なのだろう?
「お悩みですね」
考え事している途中、横から声をかけられる。
この声はまぎれもなく・・・
「英介・・・ここが元の世界だったら警察呼んでるぞ」
相も変わらず窓から登場している英介に軽くつっこむ。