Wonder land
□15.トカゲ
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「どうやら犯人はクローバーの者のようです」
何もないはずの空間から英介が現れ、言う。
白ウサギの能力、時渡りだ。
時渡りは過去二時間以内の生き物の記憶を見ることができる。
まあ、感覚的には過去に移動するような感じだが、時渡り中は人物と話したり、物に触れたりする事はできない。
また、慣れれば物体でも可能だが、いつも以上に精神力を使わなくてはならない。
英介はいつの間にか城に置いてあった脅迫状の過去を探っていた。
まぁ最初見つかった時には皆パニックに陥ったのだが・・・。
脅迫状を通して見えたのはクローバーの使者くらいだった。
だが、それまで脅迫状がどこから送られてきたかすらわからなかったので、一応進歩とは言える。
ダイヤの国に届いていた謎の予告状も本来ならこのやり方でやればよかったではないのかと思うかもしれないが・・・。
残念ながら予告状の場合は時間がたちすぎていて重要な過去は見れなかった。
二時間まで、という制限付きなんて、不便なものだ。
「まったく、あの国は問題がつきねぇよな」
紅茶をすすりながら呟くのは響。
膝の上に雑誌とか置いて見ているあたり、皆が皆ぴりぴりしてる中呑気なものだとシャルトルは思う。
「で、離れ小島って?」
令が脅迫状の文面を思い出しながら問う。
−アリスは離れ小島の塔に繋いでいる。返してほしくば頂上まで辿り着くが良い−
ぶっちゃけ僕は離れ小島の存在は知らない。
無人島、と言うべきだろうか?
木々はそびえだち、島の中心には塔がたっている。
だが、自分達以外人気どころか流れ着いた両生類以外の生物の存在を感じられない、静かな島。
今、アタシは塔の最上階の部屋に繋がれていた。
そう、最初の頃のように部屋を少しくらいなら歩き回れる程度の長めの手錠でベッドに。
「で、アタシはマジに助けが来なきゃ死ぬことになってんのか?」
目の前で暇そうにベッドにうつぶしている愛らしい顔立ちの少年、アクアに問いかける。
見た目は限りなく人間に近いが、一応種族的にはリオと同じらしい。
そのためかアクアは体の一部を水に変えることができる。
「ああ、大丈夫。もしもあいつらが間に合わなきゃ千隼は俺たちが連れ帰ることになってるからっ。最も、その頃は千隼は死んだことになってるけどね」
水色の髪を揺らしながら無邪気に答えられる。
つか、あんま大丈夫じゃない気がする。
もし、アタシが死んだことになったら皆を悲しませるだろう。
皆を悲しませることは、できるかぎり避けたい。
「んな暗い顔しないでよ、ほら」
ザンが手品のようにどこからもなくぱっと薔薇の花を一輪アタシにの前に出した。
便利・・・なのかは微妙だが、これは帽子屋の能力。
まぁ、言わば手品師だ。
能力の持ってない者は能力持ちの者を倒すことで能力をえることができる。