Wonder land

□14.それぞれの女王
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「さてと、どうするか」

千隼の右手は長めの手錠でベッドと繋がれていた。

とりあえず、優香を守るのに成功したのはいいが、予定外なことにアタシが捕まってしまった。
・・・女王じゃない事がバレたら不味いだろう。

大体、アタシにはここがどこかすらわかっていない。
それに、影に見た帽子屋モドキは一体?
見た感じはシルエットとか、身長的にも違っていた気がする。
ちょっと調べてみるか。
手錠から抜けるためにぱっと小さくなる。

あれから練習をして、何とかこの小さくなるという能力は上手く使えるようにはなっていた。
手錠は抜けたので元の大きさに戻り、逃げ出そうと窓を開ける。

「げっ・・・」

下を見ると、結構な高さに目眩を起こす。

「もしかしてここって・・・」

見回すと、広い庭に、塀の向こうには街が見える。
思い浮かべたものとは少し違うが、デジャビュをおこす。
・・・ここってもしかして、どっかの国の城?

「何やってんの?お姫様」

後ろから声をかけられて驚く。

いつの間にか誰か、ドアを開けて入って来たらしい。
どこか民族のようなペイントを顔に施した銀髪の少年。
その灰色の目には見覚えがある。

卑怯な手で英介に勝り、こちらの援軍から逃げるように去っていった少年。(九章参照)

まぁ、英介相手に卑怯も何もないんだけど。
でも、名前が出てこない。

「ザンだよ。一回名乗っただけじゃ覚えてないか」

アタシが黙っているのを見て、ザンは苦笑いをしながら答える。
同時に名乗られた時の場面を思い出す。

「・・・そういえばそんな名前だったな」

だが、確かこいつはクローバーの国に使えているはずだ。
クローバーの兵士たちと戦ってたし。

「こんな勝手なことしていいのかよ」

女王を拐うなど・・・ダイヤの国まで敵対することになる。
只でさえ味方の少ないこの国だ。

この国は二つの国を相手にしても劣らないこの兵力を持ち合せているので何とか生き残っているが、三つの国を相手するのは流石にキツいものがあるだろう。

「この計画をしたのはここの女王だよ」

ザンの言葉に目を見開いた。

どんな女王だよ、部下に国の王妃拐えって命令出すなんて。

「ってことはここは・・・」

「クローバーの城」

にっこりとザンが答える。

・・・マジか。

じゃあアタシは敵国に囚われの身・・・。
囮とはいえ、かなりのピンチだと思う。

「あのな、アタシはダイヤの女王じゃ・・・」

言いかけてはっとなる。

何墓穴掘っているんだアタシは!?
女王じゃないってバレたら最悪の場合殺されかねない!!

あ、もし女王でも用がなくなったら最悪の場合殺されかねないか。
って納得してる場合じゃない!
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