Wonder land

□9.帰る意味
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キィィン・・・

敵の少年と英介が剣を交える音が響く。
今回の相手はトランプの兵士だけではないらしく、英介と互角に戦っている。

英介は城で二番目の強者だ。
まぁ一番は女王様なのだが・・・。

あの人は最強だ。敵も本人が倒してしまえばいい話だと思うのだけど、本人曰く、それではつまらないらしい。
ちなみに敵の兵士も、味方の兵士も千隼達意外は全滅。

ふと、戦いの途中敵の灰色の目がアタシをとらえた。
敵がこちらに手をかざすと、雷のようなものがこちらにとんでくる。

「っ!?」

油断していた。

千隼はガード系の魔術はまだ練習中だったので、発動に通常より時間がかかる。
術が間に合わないのだ。

流石にアレをまともにくらってはただじゃすまないだろう。
何とか走って避けきる。

「千隼さんっ」

ブァッ

「っ・・・」

千隼に気をとられた英介は敵の攻撃をもろにくらって、壁に叩きつけられてしまう。
そのまま英介は気を失った。

「英介っ」

千隼が英介を庇うように駆け寄ると、敵の少年は不適な笑みを浮かべ近寄ってきた。

「白ウサギも弱くなったもんだ」

千隼は黙って敵を睨み付けるが敵はどうじもせず、千隼達に距離をつめてくる。

「君は、初めましてだね」

敵が千隼に向かって言う。

反撃も考えたが、自分では敵う見込みがないことに気付いているので、迂濶に手が出せない。
このままじゃ殺される?
つい、歯を食い縛る。

「俺はザン。あんたは?」

敵の口から出た言葉に目をぱちぱちとさせた。
何を考えているのだろう、殺すのに自己紹介など必要だろうか?

「・・・千隼」

相手も名だけなので、名だけ名乗った。

「そっか、千隼。よろしく。君は運がいい」

そう言うと、敵は背を向ける。
・・・敵であるアタシに背を向けるなんて、よほど自信があるのか?

敵がそのまま去っていったそのすぐ後には味方の援軍が救助に来ていた。



「ごめん、アタシのせいだ」

ベッドに座る英介に謝る。
軽く巻かれた包帯が痛々しい。

「じゃあ、責任、とってくれます?」

英介は千隼の両肩を掴み、にこにこと不適切な発言を投下した。

一応、英介なりの配慮、だよな・・・?
気を重くさせないための。
半分冗談に聞こえなくて、ちょっと冷や汗をかいてしまう。

「確実にセリフ間違ってるだろ」

一応病人を叩くわけにもいかず、軽くつっこみがてら手で払う。

「こらこら、病人にはもっと優しく接してあげないと」

「お前がもっと病人らしくしてたらな」

軽く、笑う。

ふと、こんなやりとりが少し温かく思えた。
そういえば、元の世界にいた頃はこんなに・・・。

「なぁ」
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