Wonder land

□4.格別な森
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千隼が手をかざすと、クローバーの兵士たちにむかって炎の柱が現れた。
クローバーの兵士たちは一瞬にして灰になり、消えてしまう。

「何か、儚いな」

弱い兵士たちは基本、トランプが元となっており、女王達の道具に過ぎないのだ。

力を失えば燃えてしまう。

「こっちも終わったよ」

そう言って令がこちらに走ってくる。

「今日はもう充分でしょう、引き上げますよ」

千隼達はハートの女王の命令で近い領土でクローバーの兵士を減らす、つまり敵の戦力を削りに来ていた。

俗にいう、クローバーの女王への地味な嫌がらせである。



紅い薔薇だらけのガーデン。

そっと紅茶に口をつけると独特の香りが口の中で広がった。

テーブルの上のお菓子にそっと手をつける。

クローバーの兵の襲撃から無事、ハートの城についた千隼達は城に戦力として滞在することとなっていた。

一人一人の部屋も与えられ、生活に不自由はない。

ちなみに白ウサギはこの国の軍師をやっているらしい。

「千隼」

「ん?」

ハートの女王が話しかけてくる。

ハートの女王は予想に反し、気高く美人だった。
童話のとおりではなくて良かったと思う・・・。

「この生活には慣れたか?」

「ああ、まぁ、多少驚くような事は多いが・・・」

千隼は少し苦笑いをする。

ここの文化は私たちのいた世界とは違うのだ。
驚かされることだって結構多い。

「ここの面子はどうだ?」

「まだあんまり。まだ知り会ってばかりの人も多いし」

「うむ、そうか。

次の仕事なのだが、シャルトルとともにわらわの護衛を頼めぬか?
今宵は同盟継続がため、スペードの王と面会をせねばならぬのだ」

シャルトル・メリー。

アタシたちのように異世界から迷い込んだ者の一人だ。
だが、アタシ達の世界とは異なる世界から迷い込んでいるらしい。

ふんわりとした肩までのびた緑髪に、とがった耳はまるでRPGをおもい浮かばせる。
まあ、まだ付き合いが深いわけでないから一概には言えないが、印象としては何か気のいい奴って感じである。

年の頃はアタシ達の世界にいるとしたら、大学生くらいだろう。

ちなみにこの城には他の異世界からきた奴がまだいるのだが、また後程紹介しよう。

「わかった」

現在この世界にはハート、スペード、ダイヤ、クローバーと4つの勢力がある。

ハートの国はスペードの国と同盟関係にあり、クローバーの国の強引なやり方が気にくわないらしく、ともに潰す計画をたてていて、ダイヤの国はいつも中立の立場を保っているという感じだ。

「それは良かった。行くのは三日後だ。ゆっくり準備しておけ」

ハートの女王はそう言ったあと、満足そうに紅茶に口をつけた。



キィィィン・・・

敵の兵士の剣がとぶ。

「見事、だな」

千隼が呟いた。
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