Wonder land
□3.闇
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「白ウサギ、不法侵入だぞ。何故窓から・・・」
あきれた声で千隼が言う。
白ウサギはアタシの部屋にもかかわらず、椅子に座り、ちゃっかり寛いでいた。
「僕と千隼さんの仲じゃないですか」
「・・・それより、12人、皆お前が引っ張りこんだのか?」
相手にしても無駄だと思ったのか、千隼は適当に流しつつ話を進める。
「皆じゃないですよ。僕は千隼さんたちだけ。
後の人は・・・まぁ、知り合った人もいますが、大体は知りません」
「じゃあ、後の10人は・・・?」
「自分から迷い込んだか、他の奴が連れてきたか、ですね」
「他の奴?お前ら皆、アタシらの世界とこっちを行き来できるのか?」
「皆が、と言うわけではありません。限られた人のみですね。それに僕も一時間が限界です。12人いないと事が始まりませんからね」
白ウサギがタメ息をつく。
白ウサギでも自由に世界を行き来できるわけではないらしい。
「12人は、そろっているかわかるのか?」
「今はそろっているみたいです」
「今は・・・?」
「欠けることだってあるんですよ」
「えっ、欠けるって・・・」
「ええ、この世界ですから、わかりますよね?」
そう、この世界がもし、本当にそう言う世界だっなら・・・誰かが命を失ってもおかしくない。
「大体はアタシたちをつれてきた理由はわかってきたが、もしかして・・・」
「はい、と、言うことで貴女たちには「闇」に立ち向かってもらいます」
『はぁっ!?』
白ウサギににっこりと言われ、千隼と令の声が重なる。
千隼は脱力し、令は青ざめた。
闇・・・こんな世界だ、きっとラスボスみたいなものだろう。
考えるだけでぞっとする。
ここはゲームの世界ではない、現実なのだ。
「アタシ達が戦えるわけ・・・」
「戦えますよ。魔術だって剣技だって覚えればいいんです」
「そんな簡単に言うなよ!!剣技はともかく、魔術なんて非科学的すぎる」
白ウサギにさらりと言われ、千隼は勢いで立ち上がる。
そう、非化学的。千隼達の世界では魔術なんてもの、マジックでもなければ存在しない。
ただでさえ、存在さえも信じられないようなもの。
「でも、存在してるのはわかってるでしょう?」
そう、千隼たちはこっちに連れてこられるさい、見たのだ。魔術を。
否定はできない。
とりあえずアタシは軽く息を吐いて椅子に座り直す事にした。
「それ、僕達でもできるの?」
「もちろん。魔力は誰だって少なからずも持っているんです。あちらの世界では存在しないことになってますが」
「なら、お前達だけで倒せば・・・」
何もアタシ達を巻き込む必要はないだろう。
「それでは終わらないんですよ。敵のボスはその12人でしか倒すことはできないんです」