Wonder land
□2.12の針
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目をさませば切り株に座った神崎の顔がうつる。
令は気が付くと草の上に寝ていた。
そっと起き上がり、あたりを見回してみる。
見覚えのない、森?
確か白ウサギを追いかけて本に飛び込んで・・・そもそも神崎は白ウサギに連れ去られたのではなかったのだろうか?
「ここは?」
「白ウサギの言う不思議の国だろう」
不思議の国。
先ほど魔法みたいなものに吹き飛ばされたことも思い出す。
そんなおとぎ話のようなもの・・・やはり現実とは思いがたい。
「白ウサギは?」
「さぁ。アタシを置いてどっか行っちまったらしい。
アタシも起きたらここにいたんだ」
「んな無責任な・・・」
連れ去っといて置き去り?白ウサギはどういうつもりだろう?
「どちらにしろ、このままここにいても仕方ない」
令たちはしばらく歩いてみることにした。
「何か、どっかのRPGみたいだな」
千隼が村を歩きながら呟く。
そう、村なのだ。
家もレンガとかそう言う作りでもなく、誰一人、なんと言うか、パーカーや柄Tなどの普通の服を来ていない。
村中まるでコスプレのような服を着ているが、そんなに浮いている感じでもない。
住民から何までまるでどっかのRPG。
「長老さん、薬草くれたし」
「いや、何もらってるんだよ」
令にたいして千隼がツッコミを入れる。
「そのうちドラゴン倒せだの無茶なこと言われるんじゃないだろうな」
千隼がタメ息をつく。
「問題は宿をどうするか、だな」
そう、ここには寝床はない。
かと言って野宿も気が引ける。
「ああ、寝るところね。あと、RPGなら装備も用意しなきゃ」
「そこまで本格的にしなくていいだろ。大体重い防具とか来て自由に歩き回れるか?」
「無理」
勇者でも武士でもない常人の千隼たちが見るからに重い鎧などをまとい、自由に動けるはずがない。
まぁ装備が鎧だけとは限らないのだが。
どちらにしろRPG何て冗談じゃない。
一般人のアタシ達がこんな場所てで生き残れるなんて思えない。
「装備はともかく・・・宿なら心配ありませんよ?」
「そうか、って・・・お前今までドコ行ってたんだ!?」
千隼が突然あらわれた白ウサギの襟をつかみ、揺さぶる。
白ウサギは若干意識がとびかけている。
「そうだよ、か弱い僕たちをこんな世界に引き込んで放置なんて!!」
「いや、貴方はただついてきただけですよね?」
千隼が手を放すと白ウサギが息を整えながら言う。
「富田はアタシを助けるためにきたんだ。大体お前がアタシを連れ去ろうとしなきゃ・・・大体何でアタシを?」
「貴女が魅力的だったからですよ」
タメ息をつく千隼の耳元で白ウサギが囁く。