Wonder land

□1.白ウサギ
1ページ/3ページ


「何でドアの窓ガラス凄い割れてるの?」

「強盗でも入ったとか?」

「加川が消えたってよ」

「昨日学校に忘れ物とりに行ったっきりだって」

噂話が学校中を伝染していく。
加川優香はクラスメイトの一人だ。
昨日、学校に忘れ物をとりにきたと言う点は丁度令たちと同じ。

もしかしたらあの巨大蛇に食われてしまった、というのもありえる。

そして、蛇の死体はどうなったのだろう?
まぁ七不思議だとしたら消えてしまうのがセオリーだろう。

がらっ

勢いよくドアが開く。
男子生徒の一人だ。

「開かずの間ででけー蛇の死体が発見されたらしいぜ!!
額には何かで殴り付けた後があるって」

開かずの間。
昨日令が逃げ込んだ教室の呼び名だ。
何年も使われてないらしいので皆よりつかない。

昨日見たあの蛇は実物だったらしい。
幽霊などではなかったのか。
七不思議である確率は低い。

だとしたら加川さんはどこへ?

死んでいるなら死体が見つからない、ということはないはずだ。

「あのでかさの蛇を倒せるなんて、きっと大男か何かだろか?」

皆好き勝手に噂している。

大男、ね。

令がそっと蛇を倒した本人に目をやると何事もなかったように机に伏せて寝ていた。


祝日の夕方。
学校は休みで職員たちもいない。
令は門を見つめ、深呼吸をする。

興味本意で例のバケモノの巣のようなものを見つけることにしたのだ。

この前みたいなバケモノに会い、危なくなったら逃げればいい。なんて甘い考えだが。

一応、スタンガンなどの自己防衛のための道具は持ってきた。



令は周囲を警戒しながら一人廊下を歩く。
誰もいないと思っていた教室の足元にはバッグが転がっていた。

「来るなっ!!」

突如、何処かの教室から困惑の入り交じった女性の声が響く。

神崎がここに?

こんなにも焦っている感じ珍しい。
もしかして、またバケモノが!?

あいつが危ない!!
気が付くと令は声のする方へ走り出していた。



かすかに背後にあたる風。

足元には木刀が転がっている。

千隼は追い詰められ、空いている窓に腰かける形になっていた。
片足では何とか大蛇を押し返している。

ここは五階なので窓から逃げるわけにもいかない。

素手で殴り付けたところで怯むかもしれないが、下手したら腕をとられてしまう可能性もある。

下手に動けない。

木刀を手放してしまったのが運のつきだろうか?
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ