Wonder land
□19.動物扱い
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妖精さんだ。
雄?男?の小さな妖精さんだ。
この世界ならいても不思議じゃないんだろうが、やはりアタシにとっては新鮮である。
寧ろただでさえここにはない現実感が更に無い。
しかし、妖精さんは妖精さんで物珍しそうにアタシを見ていた。
「ああ、そうだが」
「やっぱり人間だっ」
妖精さんはきらきらと目を輝かせてアタシのまわりをくるくると飛び回る。
「人間がそんなに珍しいのか?」
「うん、珍しいっ!」
「普通にその辺歩いてるじゃないか」
そう言って町行く人々を指差す。
「人間に見えるのは皆化けた妖精だよ」
「なんで人間何かに化けるんだ?」
「人間の姿の方が色々便利なんだよ。エルフとの交流もあるしね。でも人間に化けるのには結構魔力が必要でさ、僕みたいな落ちこぼれには二、三時間程度しか・・・」
タメ息をつく妖精さん。
どうやら妖精社会も甘くはないらしい。
「名前、何て言うの?」
「千隼」
名字とかは色々面倒なので名前だけ教えておく。
「僕はアレックス、よろしくね。ところで、ここで何してたの?」
そこまで言われて当初の目的を思い出した。
そうだ、こんなのんびりしてる場合じゃない。
「ロベルトってやつを探してるんだ、知らないか?」
「んー、ロベルトは結構ありふれた名前だから・・・種族は?」
「エルフ」
種族を聞いた後、妖精さん、アレックスは少し眉をひそめる。
「もしかして、あいつか・・・」
心当たりはあるみたいだが、どうやら仲はよろしくないようだ。
「心当たり、あるなら案内頼めるか?」
「あいつかなり偏屈で陰気だよ?あんま人と行動すんのは好まないし、気分害すると思う」
アタシに向けて言ったのではないのはわかっているが、偏屈、陰気と言う言葉がちょっと突き刺さる。
「と、とにかく・・・、案内頼めるか?」
「おっけー」
あれからしばらく歩き、たどり着いたのは見るからに人の寄り付かなそうな何かのビルの廃墟だった。
「本当にこんなとこに人が?」
「人っていうか、エルフだけど、よくここに来てるって噂は聞くよ」
そう言うアレックスにへぇ、と短く返事をすると、とりあえず廃墟に足を踏み入れてみることにする。
しばらく歩くと、見える人影。
ロベルトは紫色の髪を風になびかせながら外を見つめていた。
同じエルフなのにシャルトルと対照的に耳も垂れぎみで肌色も若干青白い。
個性なのか、エルフでも種族が違うのか。
「ロベルト」
声をかけると、気がついたのかこちらに目をむけた。
眉間にシワがよるほどではないが、ムスッとしていて普通の人には近寄りがたい空気を放っている。