Wonder land
□7.ポジション
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やはりこいつは、三年前に活動をやめていた天才ソングライター、Eisu。
あれから行方が知れてなかったので多少の騒ぎとはなったが、今では時の人になっていた。
「何でお前は白ウサギって・・・」
「ここの住人だとは言ってません」
思い返せば確かに、そうではある。
何故、言わなかったのだろう?
「白ウサギ、いや、Eisu・・・」
「英介です。僕は野田英介」
野田英介・・・E・N。
Eisuの本名なのだろう。
「英介、何でアタシを助けた?代わりはいくらでもいるんだろう?」
そんなこと、アタシに言うくらいなら、放っておけばいい。
でも、英介はアタシを助けた。
「ええ、代わりは腐るほどいます。異世界の者、というポジションとしては、ね」
英介は意味ありげに言う。
ポジションとして、腐るほど。
他にアタシに意味などない筈では?
「お前の目的は一体・・・」
「すいません、書類を提出しないと。女王が煩いんでね」
英介はそのまま部屋を出ていってしまった。
まるではかったかのようなタイミングで。
結局その後も、色々とはぐらかされたまま、この日は終わる。
一体、英介は何を考えているのだろう?
アイツはよく、肝心なことを言わない。
きっと問い詰めても気が向くまで教えてくれない。
やはりアタシにはまだ、英介がわからない。