Wonder land
□7.ポジション
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「二人ともごめん、ありがとな」
苦笑いをする。
わざわざ来てもらったのに、本当申し訳ない。
「いいって、こんなときもあるだろ」
シャルトルも苦笑いしながらフォローを入れる。
「千隼もなんか疲れ気味だけど大丈夫?」
令はちょっと心配そうに言う。
・・・昨日の事もあって疲れが顔に出てたのかもしれない。
「大丈夫だ、ありがと」
とりあえず精一杯笑ってみせた。
「と、まぁ仕事内容はこんなものだ」
女王からの説明が終わる。
千隼は休みも終わり、仕事内容を聞きに女王の部屋にきていた。
「そういえば白ウサギは?」
姿が見当たらない。
今回の仕事は白ウサギが一緒だったはずだが・・・。
「まだ残業をしているのであろう。あやつ、昨日何かが気になっているらしく調子が悪いと思ったら、仕事の最中に抜け出したらしいのだ」
呆れた声で女王が言う。
仕事の最中で、抜け出した?
初耳だ。わりとちゃっかりしている白ウサギがサボりなど。
また、白ウサギの部屋を訪ねた。
そっとノックをすると、ドアが開く。
「いらっしゃい、千隼さん。そろそろ来る頃かと思ってましたよ」
開き終わる少し前のセリフ。
白ウサギはドアを開き終わる前にアタシだと確信していたらしい。
「お前はエスパーか」
まるで、何もかも、わかっているようで・・・。
「ははは、残念ながら、そんな能力持ち合わせていませんよ」
そんな会話をしながら白ウサギはアタシを部屋に招き入れる。
椅子にかけると、コーヒーを出された。
「ミルクや砂糖は?」
「いい」
そのままコーヒーに口をつけると、香ばしい香りと、苦い味が口の中に広がる。
「白ウサギ」
「はい」
アタシは一息つくと、言葉を続ける。
「首の後ろ側、見せてくれないか?」
「おやおや、大胆ですね」
千隼は白ウサギのアホな発言にタメ息をつくと、近づいて、白ウサギの後ろ髪をかきわけた。
白ウサギは抵抗せず、じっとしている。
やはり、後ろの首筋に見えた、英数字の4の痣。
「Eisu・・・」
ふと、音楽の店を見て思いだしたのだ、白ウサギの容姿はEisuに似ている。
否、そっくりだ。
最初会ったときは髪の長さと、あれから年月もたっているので、大人びている、そして、口調が違うので気付かなかった。
ギターピックのイニシャル、E・Nも。
Eisuの本名は知らなかったけど、イニシャルくらいは知っていた。
そして、こいつのベッドの下にあったピックのイニシャルと同じだったのを思い出す。