Wonder land

□27.黒の女王
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「手を取るな!」

突如、後ろから低めの声が響く。

「ああ、また邪魔者か」

ジャックが鬱陶しそうに呟く。

「約束が違うじゃねぇか!」

この声は、英介だ。
その目は紅く光っている。
英介は構えをとると、ジャックへと闇を打ち付けた。
が、ジャックにはまったく効いていない。

「俺の力じゃ俺は倒せないよ」

ジャックは手を振りかざすと、先程と同じように英介を攻撃する。
闇は英介を切り裂いた。
そのまま地面に倒れる。

「英介っ」

「くっ・・・千隼さん、行かないで・・・」

這いつくばりながらも英介が手を伸ばしてくる。
必死に英介に駆け寄ろうとするが、ジャックに腕を捕まれてしまう。

「離せっ、英介が!」

「目障りだし、消しちゃおうかな?」

「止めろっ!」

パチンッ

気が付いたら、手が出ていた。
ジャックは一瞬驚いた顔をしたが、面白そうに自分の頬をおさえる。

「アタシから英介まで取らないでくれ!ここで消したら舌切って死んでやる。アタシが必要なんだろ!?」

力の限り叫び、睨み付ける。

「仕方ないなぁ、行こうか」

ジャックはそう言うと、またアタシに手を差し出した。

「行くな千隼っ・・・!」

英介がかすれそうな声で叫ぶ。
ごめん、英介。

アタシはお前まで失いたくない。

アタシはジャックの手に、自分の手を添えた。
ジャックは満足そうな笑みを見せる。



「ここは・・・?」

「クローバー、ダイヤ、ハート、スペード。その国々の中心にある湖だよ。普段は結界が張ってあって誰にも入れないけどね」

「あれは?」

千隼は湖の中心にあるものを指差した。
湖からは黒い霧に包まれた城のようなものが半分ほど水面から出ている。

「黒の城だよ」

「黒の・・・?」

ジャックはアタシを抱き上げると、湖の上を歩き出した。
水面歩行だ、今更だが現実味がない。
令が消されたのだって・・・夢だったと思いたい。

「そう、ここは黒の城。昔、ロゼに封印された黒の女王が住んでる、ね」

きっと、アタシたちの倒すべき敵なのだろう。
水面を歩き終え、ジャックは窓から城に入ると、ゆっくりアタシを床に下ろした。

「この城に黒の女王が・・・」

「そ。君たちの敵で・・・俺の母親。今は眠ってるけど、もうすぐ目覚める」

ジャックはそう言って歪んだ顔で笑う。

「くっ、ははっ、この世界は時期終わる。そしたら・・・」

「ジャック?」

笑う表情とは対象的に、悲しそうな瞳。
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