本
□うたかたのあなた
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深夜の闇が寝室に満ちている。
僕と骸の呼吸する音が交互に聴こえても、すぐにそれは辺りに散らばる
静寂に飲み込まれていった。
別に何をしているわけでもない。
ただ偶然二人して同じ頃に目が覚めて、それから何でか眠れないでいるだけだ。
ふと顔を上げると、真顔の骸と目が合った。
僕は骸をただ見ている。
『……雲雀くん、は、結局』
小さい声が震えている。
控え目に言葉は続く。
『いつも、最後までは、しないんですね』
『……なにを』
『なんで僕を、犯さないのかと』
これが自分のものかと思うほど低い声が出た。
骸は無表情に、またじっと僕を見つめる。
答えろ、と催促しているのか。
『わからない』
『わからない?』
『なんでだろう』
『……』
『犯されたい?』
弱々しく首を横に振って、僕を抱き寄せた。
ちょうど胸のところだから、心臓の音がよく聴こえる。
少し速い。
僕にはそれがなんでかもわからない。
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