□それが愛だといい。
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ああ彼は、僕をどこまで理解してしまっているのだろう?
僕は時たま今朝のように怖くなる。
だから自分のことを沢山話す。
それが全てじゃないんです、もっと色んなことを覚っているのです。

『雲雀くん、良いんですよ、僕は別に』

『……なにが』

『なにって』

そりゃあ、と彼の可愛らしい頬に軽く音をたててキスを落とした。
こういう誘い方は、一番嫌いと知っている。
あなたが僕を大事にしたくて、一線は越えていないのも知っている。
知っていてわざと、敢えてやっています。
意味はありません。そういう気分でもありません。

『かわいそうに。殺してあげたい』

そんな台詞は怖くない。
覚っているのですから、所詮は子供同士の愛情遊びだと。
殺せるわけがないのだと。
どうぞ、と笑顔をつくる馬鹿らしさ。
冷やかすような見慣れた指先。
ああ、疲れた、くだらない、きっと彼は僕以上に。
本当になんでもないのです。
ただこの白けた雰囲気を、演技でも、お互い演技でも、
壊したくはないのです。



end
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