□それが愛だといい。
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呟いて、はっと胸を突かれた。
忘れている。
最後に紅茶を淹れたのはいつ、だったっけ。
いや、そんなの考えるのは止めよう、と
誤魔化しのつもりで掴んだポットの取手が熱いのを忘れていて、
白い肌に目立つ火傷を見ながら、今度は僕が立ち尽くした。



***



『雲雀くん、紅茶淹れましたけど』

『あ、……ありがとう』

『いいえ。座りませんか』

『うん』

紅茶が心地良く香った。
するすると動く骸の指がミルクをたっぷり注いでいる。
少し前までは毎日こうして二人でソファに腰掛けて、
気付くと一日なんて終わっていたのに。
世の中の全てのせいで、僕等の距離が秒刻みで離れていくようだ。

『……冬休みになったら、
毎日こうして、二人で居たい』

学校が嫌いになりそうだよ、と微笑もうとしたけど、口の端が歪んだだけみたい。
骸は作り笑いを浮かべて、もう十二分に温い、ともすれば冷めきっている紅茶を熱そうにすすった。
カップをソーサーにかちりと戻して、絶対に意識的に僕を見ないようにしている。

『ねえ、僕のこと見ないようにしてない?』



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