短編

□その目に囚われたのは
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戦いのさなか、私の横を駆けたあいつと目があった刹那。


何かが私の心に産まれた。


「はぁ…」

あの日から数日たった今でも、私の心は晴れる兆しを一度も見せてはくれない。

それどころか、あいつに対しての想いが募る一方だ。

こうやって日に何度も、あの日を思い出してはため息を吐き、名も知らないあいつに想いを馳せる日々が続いている。

「隊長。どうかなさったのですか?」

「いや…何でも無い」

これでも私は、ある大きな過激派攘夷グループの幹部の1人。

そんな私がこうやって腑抜けていると、部下達の士気に関わる事は重々承知している。

だからはやくこんな気持ちには別れを告げ、次の攘夷活動の作戦を練らねばならないといけないのだけれども。



どうしても断ち切れぬこの想いが、考えれば考えるほど恋い焦がれるこの恋情が、私を攘夷志士では無く、一人の女にしてしまう。



一目惚れなど信じてはいなかったのだけれど、こうやって我が身に降り掛かれば認めざるを得ない。

「どうしたら、いいのだろう…」


結局、もう会うことも無いだろうと気持ちを誤魔化す事に決め。

次の任務へ向かった。

今回は今迄以上に気を引き締め
なければいけない大きな戦いだったのに、

見付けてしまったのだ。


あの死んだ魚の様な目をしたあいつを。


この前と同じように憎き新選組と行動を共にしているところから、やはりあいつは私の敵なのだろう。

斬るべき対象なのだろうけど、

あいつと私が相対している今でもこいつを斬る気など微塵も起きず。私は刀を構える事すら出来ない有様だ。


そんな私を訝しんだあいつは、私の顔を見つめた。すると一瞬目を見開かせ、直ぐに厭らしげに二ヤつけば、声を発した。




その目に囚われたのは、
わたし?それともあいつ…?





「なぁ、お嬢ちゃんは一目惚れって信じるかァ?」


Happy End…?

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