短編

□とある女の物語
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私の夢は叶いました。
あなたはどうですか?











『俺ぁ江戸で一旗上げてくる!』

『うん』

『、情けねぇんだが、無論。そんなつもりは更々ないが……万が一にも失敗するかもしれない』

『…うん』

『そんな博打にお前を付き合わせられないんだ。分かるな?』

『……』

『だから、すまねぇがお前を連れて行くことは出来、ねぇ…』

『……うん。分かってるわ。私は私で此処で夢を叶えるから…』


(――待ってても良い……?)



『…くれぐれも元気でね?』

『おぅ!そういう、お前もな。
……それじゃあ。――』









そう言って別れたのは今では10年以上も前。自分からしたらそんなにたった気なんてしないのに。

(……年、かしら?)






いつのまにか夢は叶えたし。
願いは大抵揃ったわ。
もう悔いは無いわね……
ほんと、年寄り臭い。













私は子供の頃から夢だった医者になって、小さいけれど自分で病院も開いたの。最初は勿論沢山苦労したし、止めたいって何度も考えたわ。けど風の便りで聞く貴方達の活躍を聞くと、私も負けてられないっ!て頑張れた。


そのおかげか、今では何とか形になったし。町の皆とも仲良くなれた。

凄いのよ?
おじいちゃん、おばあちゃん方なんか、今でも独り身な私の事を心配して、頻繁にお見合いの話を持ってきてくれるの。

しかも中々の盟主や格好良い人達ばかり。

優しい人達でしょ。

何でそれを受けないかって?



貴方がもう並々ならぬ地位に就いたのは知ってるし、その活躍も。


相変わらずの馬鹿が付く位のお人好しさもね。


だから、私も負けてられないなぁって……若い頃の気持ちが再熱してきて、頑張ったのよ。







まぁ、裏目に出たんだけどね…


つまり何が言いたいかって、元気にしてるか。それだけが聞きたかったの。


気にしないで。
返事も要らないわ。


それじゃ、また。
気が向いたら手紙、書くわね。


くれぐれも元気で。
無茶だけはしないでよ……?












ほんと、何してんだろ。自分。
どうせ出す勇気何て無い癖に。

今でも迎えに来てくれる事を夢見てるくせに。

我ながらプライドだけは一人前何だから。



ミツバは勇気を出せたのに。
ちゃんと踏ん切りつけれたのかしら。……トシもミツバも相手を思いやり過ぎなのよね。



それに総悟。まだまだミツバにべったりなんだろうな。姉ばなれしないとミツバが安心出来ないだろうに。

そして……

あぁ、やめやめ!
どうにも時間が無いと思考が湿っぽくなっちゃうわね。







あぁ、そんな目しないで。
私は大丈夫だから。

梅さんこそ、安静にしなきゃ。
嵩さんもよ。ほら私の事はいいから、笑って?












ある所に、町の皆から慕われている女医がいました。その人はその聡明さ美しさから多くの縁談を持ちかけられましたが、昔の男を思って、合うことすらしませんでした。そして、ある日ある攘夷浪士が街にお金を求めて襲撃してきました。

少なからず武芸を嗜んでいた彼女は街の若者と共に先陣きって、迎え撃ち見事撃退しました。

素晴らしい事に軽いケガ人はいるものの、死にいたる者はいませんでした。

そしてその夜、中々夕食に現れない彼女を心配した街の人々が揃って彼女の病院へと赴くと、

そこには幾つもの手紙を抱え安らかに眠る彼女がいました。






とある女の物語





街の人々は今までの感謝を込め、彼女の願いを叶えました。


END

近藤さんHappy Birthday!

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