短編
□夢朧
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今年も桜が咲く。
お前が好きだと言った桜が。
桜が咲く頃現れたお前。
お前は桜が好きだと言った。
幻想的だから、見ている間だけは自分を忘れさせてくれるから、夢を魅させてくれるから好きなんだと言った。
そして俺の事を桜が満開に咲いた頃好きだと言った。
いつでもお前は桜の下にいた。
お前は桜の精で現実には居ねぇんじゃねぇか?
何て戯れ言を思い付く位になァ
お前は桜が散る様を美しいと言った。儚くて殺那的でけれども何処か人を引き付ける。そんなところにいつの間にか魅了されていたの、って。
俺にも同じように魅せられた。
いつか俺に呟いたよなァ?
そしてお前はお前が愛した桜と供に瞬く間に、散った。
何でかなんてそんなものは知らねぇし知りたく何かない。
今現在俺の隣にお前がいない事実は変わり様もねぇだろ?
だから理由に何て、そうなった過程に何か……興味がねぇ。
「結果」が変わらないのならば知る必要、無いだろう?
今年も桜が散る。
お前が愛したその散り様を、
やっぱり俺ァ愛せそうにねぇ。
夢朧
(全ては桜と共に)
だから俺ァ壊すんだ。
お前を奪ったこの世界を
END