短編

□時は流れず
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『堪忍な』



貴方がたった一言の言葉だけ残して私の元から消えて、一体幾らの年月がたったのでしょうか?


いつものように肌を重ねて、いつものように愛を語り合って、いつものように一緒に眠りに就いたはずだったのに。

何故か朝目覚めた私の隣には貴方は居なくて、貴方が居たはずの場所には微かに香る貴方の残り香だけ。

いつもなら必ず私より早く起きていて、私が起きるのを待って居てくれる貴方が、あの独特の笑顔を浮かべて『おはようさん』と言ってくれるはずの貴方は居なくて。

あぁ、それならばと部屋を見回して見るけれど貴方が居た痕跡何て跡形も無くて、只一言の置き手紙が一つ。






貴方がたった一言の言葉だけ残して私の元から消えて、一体幾らの年月がたったのでしょうか?




「おはようさん」





なぁんだ、これは夢なんだ。


だって今私の目の前には確かに貴方がいるもの。ねぇ、聞いて?ギン今日ね私怖い夢を見たのよ。





時は流れず。
(男が居なくなり女の時は止まった)




いくら呼び掛けても返事を返さない女を悲痛に呼び掛けるは女と男の唯一の親友なりて




End

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