短編
□楽園
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ここのところルークとティアが一緒に居る事が多い。
俺と居る今までの僅かな時間も全て彼女との時間となっていった
嗚呼……
見ていて腹立たしい事この上ない
二人が楽しそうに笑うその光景に沸々と湧き上がってくる黒い炎
心地良いものじゃないな
そう…あの女の存在が今の俺の心を啄んでいく…あの女の存在が俺からルークを奪う
「ルークの隣は俺のものだ…お前等如きにくれてやるつもりはない」
仲間とやら上辺の関係など断ち切る事は容易い
ルークさえ居れば今の俺には何も必要ないのだからな
さぁ…今の内にその幸せとやらを存分に堪能しとくが良い
この俺に…地獄に落とされるまでに、な
「ふぅ…長く浸かり過ぎたかしら」
風呂上がりかほんのりと顔を火照らせたティアは風あたりに外へ足を向けていた
辺りは暗い
その暗闇の中一点一点の星が地を照らしていく
「綺麗…」
(ルークと旅を始めた時もこんな感じだったかしら…)
ちょっと前までの事をうっすらと思い浮かべ自然と綻ぶ笑顔
互いに想いを寄せている事も知らず、ティアは自分の一方的な片思いなのだと一人になっては日常頭を悩ませていた
それでもルークへの想いは本物そのもの
想いを告げようと決心した今日、もう後戻りは出来ない
静かに流れる風に月明かりで照らされた髪を靡かせては瞼を綴じる
(…ルーク……)
ザッ――――…
「!!?」
途端に聞こえてきた足音に僅かな隙も見せず後ろを振り向く
この場に魔物など居るはずはない
だとしたら賊か…
どの道気を抜く事は許されない。一時でも気を弛めては命取りになるのだから
構える武器をギュッと強く握り締めて音のする方向を睨みつける
戦闘慣れした身のこなしでただそこから敵が現れるのを待つ
ザッ
ザッ
一歩一歩それは自分の元に確実に近付いてきている。
ゴクリと唾を飲んだのもつかの間
明かりによって足音の主が露わとなった