短編

□アンバランスなアナタに恋をした
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「キッドー?おーーい、キッドー?」
「どうしたの、ソウル?」
放課後。ソウルは死武專の廊下でキョロキョロと挙動不審な行動をしていた。
「いやー…キッドを探してんだけど…」
「キッド君なら研究室の方だけど。さっき見たよ」
マカは後ろを振り向いてそちらを指差す。
「何かやけに嬉しそうだったけど。キッド君」
「なっ…研究室って博士のいる教室じゃねーかっ!!抜け駆けはさせねぇぞ、博士の奴!!」
「えっ、ちょっとソウル!!」
マカの制止にも耳を傾けることなくソウルは走り出した。


死武專の廊下。前方に、ツギハギだらけの白衣を着た、頭にネジの刺さった人を発見。
「はーかーせっ」
目当ての人物を見つけひょいと後ろから抱きつけば、相手は待ってましたとばかりに満面の笑みで顔をこちらに向ける。
「どうしましたか、キッド」
低めのボイスは己の崇拝するシンメトリーに負けず劣らず美しいモノだ。キッドは背中からスルリと降りるとシュタインの真正面に立った。
「博士。今日は俺に1日付き合ってもらいますからね」
「それはデートのお誘いですか。それとも」
「どうとってくれても構いません。ほら、行きましょう」
キッドは何やらいそいそとシュタインの手をとる。
急いでいるのか…?
「やけにせっかちですね」
「シュタイン博士に何が足りないかっ!!それがやっとわかったんです!!」

足りない……?

キッドに手をひかれながらシュタインはじっとその言葉の意味を考えていた。
愛…か?いや、この子には十分すぎるほど無償の愛を注いでいるし、昨日だって……いや、そんな惚気話などではなくて…。
頭の中でぐるぐると色々な考えが回っている。こんなに悩まされるのは目の前のこの子にだけだろうと、隅の方で密かに幸せを感じながら。
その間も歩は確実に進んで行き。
どこへ向かうのかと思えば、いつの間にか死刑台屋敷の玄関の前に立っていた。キッドが素早く扉を開けてシュタインを招く。
「あー……キッド?これは一体…」
「博士っ、さあ早くっ!!」
「あ…ちょっと…」
ぐいぐいと引っ張るキッドにされるがまま。どんだけ甘やかすんだとツッコミをかますがやはり抗う気にはなれない。
一体何をする気なのかとキッドを見れば、嬉々とした表情で廊下を進む可愛い生徒は自室のドアを勢いよく開けた。
「これは…まさか…」


「キッドォーーーっ!!!」
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