短編

□イタリアの花嫁 前編
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しばらく三人共が黙りこくっていると、重々しく口を開いて山本がポツリと呟いた。
「………寂しい、のな」

「「………え…?」」

寂しい。という一言。その一言で、獄寺は手を放し、山本はずるずるとコンクリの床にずり落ちた。


「もう、3ヶ月も会ってねぇんだ」
「そう、なんだ…」
山本が話したことは、遠い場所にいる己の愛しい人のこと。それを聞いてツナと獄寺は密かにショックを受けていた。

彼女とか…いるんだ……。

密かに想いを寄せていた二人であったが、今確かに音をたてて淡い夢が崩れ去った。
「その人、今どこにいるの?寂しいって言ってたけど」
内心では別れろだの何だの腹黒いことを思いながらも、上辺だけは優しい親友であろうとツナは善処しながら山本に聞いた。
「ん…イタリア」
「イタリア?!!」
「そいつ…イタリア人か?!!」
「…えっ…と。うん、まぁ」

マジかよ……。

山本がイタリア人と付き合っていたとは…全く知らなかった。イタリア人と聞いて獄寺は何となく悔しかった。
「遠距離恋愛だってのは分かってたけど…やっぱ寂しいのな」
「山本…」
「けっ…んなことで悩んでたのか」
「獄寺?」
獄寺がペットボトルの中身を飲み干すと音を立てて床に置いた。そしてつまらなそうに山本を見る。
「そんな奴別れちまえ。別れろ別れろ」
「(獄寺君勇者!!)」
心の中で密かに拍手をするツナ。
「え?……でも、俺…アイツのこと…」
「好きとかじゃねぇよ」
「??」
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