捧げ物・宝物

□りよ様へ
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骸は猫が好き…。
特に黒猫が…


僕をかまってよ


「おや、貴女は美人さんですね。」
『ニャー』
「真っ黒な艶のある毛並み。つぶらな瞳。本当に素敵な猫さんですね。」

骸に撫でられ、気持ちよさそうにゴロゴロと喉を鳴らす猫。

すっかり懐いてしまったその猫は、骸の足元にぴったりとついて一緒に歩いている。

そう、隣に僕がいるにも関わらず…。

「…………」
「どうしました、恭弥?」
「いや、この猫…捨て猫なのかなって。」
「ああ、多分捨て猫ですね。」
「えっ…」
「こんなに毛並みが揃っている捨て猫を見るのは初めてですがね。
でも、よく見るとやせ細っています。多分つい最近すてられたのでしょう。」

よく見ると真っ黒なその猫は所々傷が出来ている。

「しょうがないですね…。分かりました。貴女を少しの間飼ってあげますよ。
その傷が治って、1人で生活出来るようになるまでね。」
『ニャー、ニャー』
「ふふ、可愛いですね。」

そう言って骸は優しく頭を撫でる。
そんなやり取りを見ている僕はなんだかその空間に居ないような圧迫感があった。

「っ……もう今日は帰る。」
「えっ、あ、はい。お気を付けて。」

骸は僕を呼び止めることもなく、その猫を抱き締めながら歩いていった。


「はあ…」



次の日

黒曜ランドに足を運び、骸のいつもいる部屋に足を進める。

部屋の前までいくと、骸の声が聞こえた。

「そんなに急いで食べなくてもなくなりはしませんよ。
だから…クフフ、くすぐったいですよ。」

その声がどこか嬉しそうで、胸が痛んだ。

ガチャ、バンっ!

「やあ、かみ殺しにきたよ。ちょっとムシャクシャしててね。」
「最初の第一声がかみ殺すって…全く貴方は…
少しはこの子のように素直になったらどうです?」
「っ……」
「かわいげがないですね。」


ブチ…


「そう、僕は可愛げなんてないさ。というか、そんなのなくていいしね。」
「…」
「はっ、いいんじゃない。その猫と仲良く過ごしてれば。
そこまでして君と付き合っていたくない。」
「ちょ、恭弥っ」

バキッ!!

「っ…」
「じゃあね。」



何故かムカついた。
この僕と猫を比べている骸もムカついたし、それに劣る僕もムカついた。

「最悪…」





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