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□あるひのよるに
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冊につながれた牛はいつもいつも牧場のはるか彼方に見える丘を眺めては思いを馳せていました。あの丘の向こうにはいったい何があるんだろう…。






ある日の夕方、上機嫌でさんぽをしていたギンは牧場をみつけました。かこいの中にはヒモでつながれた牛がみえます。うしろ姿しかみえませんが可愛いブチのワンピースをきていました。きのうあった出来事を思いだしたギンは興奮してその牛に声をかけてみました


「ねえねえ君さ、今どんな下着はいてんの?」
一瞬振りかえったかと思った牛はギンの姿をみるとツーンとそっぽを向きました
「なんだ無視かよ。なら、」

ヒョイと冊を飛びこえたギンは牛のスカートを後ろからぺろりんしてビックリしました

「!!?」

驚いたのは牛も同じです。あまりにも驚いたので息がとまるかと思いました。なんの反応も示さない牛がなにかおかしいと気づいたギンは横顔をのぞきこみました

みればワンピースの前をモジモジと押さえ涙目になっています。ギンはなんだかすごく悪いことをした気になりました。ちょっとからかってやろうとしただけなのです

「……ごめん」
コクと黙ってうなずく牛にギンはきゅうんとなりました。さっきはあんなにお高くとまってたのにどうした事でしょう。ギンはどうしていいのかわからなくて牛の背後に突っ立ったままです

「…乾かなかったんだ、だから………」
聞きとれないほどの小さい声で牛がやっと口を開きました

「え、なにが?」
唐突に言われたことにギンのあたまはついてきません

「きのう夜中食事に出たら暗闇で変な悪戯されて、それでそれで……汚しちゃったんだ…。きっとバチがあたったんだ。夜は怖いけものがいるから出ちゃいけないって言われていたのに」
ピンクの鑑札のついた耳を真っ赤にした牛は下を向いたままです

あれ?それ見覚えある…
「ね、ちゃんと顔みせて」


.つづく

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