hand.
□繋ぐ
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赤い糸。長いそれの両端をしっかりと結び1つの輪を作る。人と人とを結ぶ赤い糸、人と人とを繋ぐ輪。
「─ねぇ、あゆむ」
小さな手、小指を糸に引っ掛け他の指を間に通す。
「なに?さがる」
クルリと手首を動かし新たな形を造形する。
「これ始めて何時間たった?」
「2時間くらい?」
「えんどれす…」
退の手に絡む糸を歩がとる。それをまた退がとる。それぞれに形を作るそれは一般的にあやとりと呼ばれる遊戯だ。
ハァ、小さなため息と共に退が外に目を向ける。
「雨だよ」
「知ってる。次さがるの番」
「あきた」
「知ってる」
開放した戸からサァァァと静かに降る雨が見える。縁側は半分ほど濡れ木の色を濃く変えていた。
「雨雨降れ降れ母ちゃんがー」
「夜業で技を磨くのさー」
「そんな歌だっけ?」
「君ちゃんの場合」
「というか1人で進めるなよ」
「だってさがる遅いんだもん」
「ていっ」
「あ!」
あやとりを1人で進めていた歩。それを退が割り込む。じゃーん、と言い出来たのはホウキだ。
「ふ…、まだまだだね」
「何を!?」
それを再び歩が奪い取り上手く糸を絡ませていく。
「カメ!!」
「─ッ!まだまだ、富士山!!」
「まだまだ!トンボ!!」
「さかずき!」
「はしご!」
「ゴム紐!」
「東京タワー!」
「東京タワーって何!!?」
意地になり互いに技を繰り出して行く。しかしそれもネタが尽き2人共床に手を付きゼーゼーと息を吐いていた。
「やるわね、」
「あゆむこそ」
ふぅ、と呼吸を整え仰向けに寝転がる。延ばした手が互いにぶつかりギュッと握った。何だかこそばゆくて、どちらかともなく笑いが漏れた。
気付けば雨は上がり蒼い空が広がる。外に向けた視線。その先に映る彼ら。
「!─あゆむ!」
「さがる!」
握り締めた手をそのままに縁側から揃って飛び出す。此方に向かって手を振る彼ら、大好きなその人たちの元へと。
赤い糸が繋ぐ。
fin.
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