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□炬燵の記憶
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庭一面に紅や黄、橙の葉が広がる。やや冷たい風が吹き本格的に秋を感じる今日この頃。
そんな中、山崎は盆を手に縁側を歩いていた
「副長ーお茶お持ちしました」
「おー入れ」
「失礼しま─…って何やってんすか」
副長こと土方の部屋に入ってみれば椅子の上に立ち高い位置にある押し入れを漁るその人。
手伝え、との声が掛かり盆を置いて近付く
「うわっ!」
「どんくせぇ奴だな、受け止めろよそんくらい」
突然頭上に降ってきた布団らしきモノ。その急激な重さに耐えられず山崎は尻餅をついた
「ッ鼻打った、」
「知るか。ほら次は落とすんじゃねーぞ」
そう言われ次々と出て来るモノを並べていく。
それは冬場でよく見るものだった
「……こたつ?寒いけどまだ早くないですか?」
「煩ぇ。近藤さんに言ってくれ」
「あぁ…けど何でですかね、みかん貰ったから〜とかだったりして」
「有り得そうで笑えねぇよ」
近藤には逆らえない土方。理由も分からないまま組み立てていれば机となる板に小さな落書きを見つけた
「あれ…これって─
「出来やしたかィ?」 あ、」
沖田隊長、振り向いた先の彼へと言う。
沖田はズカズカと部屋に入ると山崎が見ていた落書きを覗き込んだ
「さがる、そうご……って書いてありまさァ」
「これ試衛館にあったやつなんですね」
「悪戯書きとかガキだな」
土方が溜息を付けば沖田はいそいそとコンセントを差し、こたつの中へ入った
「落書きは仕方ないってもんでさァ。何せこん時は近藤さんが居なくて死にそうでしたからねィ」
「そうそう、沖田さん聞いてなくて拗ねてると思ったら急に泣きそうになるんで驚きましたよ」
「言うじゃねーか、山崎だって土方さんが居ないって家中捜し回ってたくせに」
「何嘘ついてんですか。俺は出掛けるって知ってたし慌てもしてないですからね─って土方さん?何か落ち込んでません?」
「…何でもねーよ」
自分がいない事で泣けば可愛気があるものを。土方があまりに動じない山崎に少し寂しくなったのは此処だけの話
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