hand.


□帰する場所(山崎)
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「──…ッまだ粘るか」
「いっそ見付かる前に…」
「まず始末が──…」



男共の太い声。その中心にいるのは山崎。両手を天井から垂れる鎖に繋がれ足が地に付くか付かないかといった所だ。紅い雫が足元に溜まる

だが、攘夷志士達の顔に汗が浮かぶのとは逆に山崎は殴られ腫れようとも涼しい顔をしていた。さながら今晩の夕飯は何だろうとでも考えていそうだ



「テメェ嘗めてんのか!?」

「だから、かくれんぼしてたんですって」

「んな嘘が通じるか!」



先程からこのやり取りの繰り返し。死なれては何処の密偵か聞けぬ為殴る蹴るの暴行を与えていたが遂に頭に血が上ったのか刀を抜いた



「待て!」
「腕一本切り落とした所ですぐ止血すりゃ死ぬ事はないさ」



そう言い山崎の肩に刃を宛行う



「──ッ!!!」

「俺は刀の扱いが下手でよ、腕が落ちるのにどれくらいかかるかねぇ」



刀を引かずに力任せに押し付ける。それで切れる筈もなく刃が肉にめり込んでいく



「─クッ……っ、」



声をいくら殺そうとしても漏れる音からその痛みがどれ程のものか伝わってくる。或いはそれ以上か



「…おい、コイツ真選組の密偵じゃないか?」
「は!?真選組!??」
「見廻り組にゃ密偵なんて話聞いた事ねぇ」
「チッどっちにしろ幕府の狗か。たが真選組といやぁ鬼だの言われてるが…
たかが田舎者。似非侍が幕府の力で威張ってるクズの集まりだろ」



下卑た笑い声が響く。それに今まで涼しい顔をしていた山崎が一変、険しい表情に変わる



「──…が」

「…あ?」

「クズが、負け犬の遠吠えだな。副長達を待つ迄もない」

「─ッテメェ─!!!」



激情した男が刀を高く振りかざした



鮮やかな紅の雨が降る




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