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□帰する場所(山崎)
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帰する場所
(山崎)




漆黒の闇

何時もならば地上を照らすはずの月は欠片も見えない新月の夜

誰も住んでいないはずの廃屋で怪しい影が複数蠢く。灯籠の明かりが揺れそれらの影を浮かび上がらせた。その者達は一つの紙を囲い真剣な面持ちで囁き合っている

そして、その天井裏にも別の影が潜む



「──…山崎さん、」

「静かに」



そこは潜入捜査の真っ只中。過激派では無いものの紛れもない攘夷志士の密談。真選組として見逃す訳にもいかない。
監察方とは常として一人で行動するものだが、稀に新人育成のため補佐を付ける事がある。

それが今回は仇となった



────ギシ─…



「何奴──ッ!」



新人隊士の手が脆い所に当たり小さな音が鳴った。それを攘夷志士達が聞き逃すはずも無く二人のいる天井に薙刀が刺さる。山崎達が覗くのに使用していた穴から落ちた紅。畳に染みを作る



「山崎さん!何で庇って─」

「擦り傷だから、」



薙刀は真っ直ぐ新人の胴を貫こうとした。山崎は咄嗟に腕で彼を押しその刃を受けたのだ。

(マズイな…)

下の者達には潜入者が居る事が完全にバレた。が、まだ二人とは分かっていないはず。



「すぐ副長の所へ。ここは俺が引き受ける」

「けど、」

「いいから早く!」



その監察は複雑な顔をしたが、どうかご無事で、と呟くと侵入口の方へ走り去った。その間にも薙刀や刀で突かれ元々腐っていた天井板は脆くも山崎と共に崩れ落ちる

着地したと同時、首本に突き付けられる刃。視線を上に向ければ怖い顔をした男達

山崎は自嘲的な笑みを漏らした




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