その他短編

□ただ単に料理をするユーリとフレンの話
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「今日の夕食は僕が作るね」


陽も傾きかけた頃、ソファに寝そべってうたた寝をしていた所に名前を呼ばれて寝ぼけ眼なまま上半身を起こす

聞き間違えるはずがのない幼馴染みの声に振り返ると包丁を片手に爽やかな笑顔がそこにあった。

ホラーかと思うような姿に一瞬にして目が冴え、次に幼馴染みの放った言葉にぱちぱちと瞬きをした。


「ハァ?…どうしたんだよいきなり」


「いきなりって別に他意はないよ、いつもいつもユーリにばかり頼ってられないだろ」


別にいつも作っているわけではない。
めんどくさい時は渋るフレンを連れて近くの酒場で食べることだってある。割合で言うと俺の方が作るのが多いだけだ。
と言うかフレンに作らせると食材が勿体ないことになるからわざと作らせないようにしていただけなのだが。


そんなことなど露とも知らないフレンは夕食の献立をなににするか呟きながらキッチンの方へ消えて行った。


「マジかよ、」


これから起こるであろうことを考えると頭を抱えながら軽い目眩を覚える。そんな俺の様子を察してかソファのすぐ近くで寝ていたラピードが心配そうに駆け寄ってきたので頭を撫でてやる。



フレンの料理はお世辞とも美味しいとは言えない。てか不味い。
レシピ通りに作ればマシな物は作れるが、謹厳実直を絵に描いたフレンは言い方を変えたら負けず嫌いで融通がきかない男で、「そんなのに頼らずとも作れる」と豪語し誕生日に俺が買ってやったレシピ本も陽の目を見ることなく引き出しに仕舞われている。

少しでも最悪の結果を防ぐためにキッチンへと足を踏み入れ、柱に身体を預け幼馴染みの後ろ姿を眺めていると視線に気づいたフレンが不思議そうに首を傾げた。


「お腹すいたのかい?もう少し待っててくれ」

子犬のような純粋な蒼い瞳をこちらに向けるフレンに、お前の料理が怖いから見にきたとは言えず、シャツを腕捲りし「手伝う」と短くフレンに告げた。


まな板の上にジャガイモは皮付きのまま四等分、人参も皮付きで一刀両断に真っ二つ、玉葱は皮は剥かれているがこちらはそのまま鎮座していた。

「(どーゆう状況だコレは)……で、なに作る気だったんだよ」

何でこうなるという言葉は寸前の所で飲み込み、ため息と一緒に言葉を紡いだ。


「見たらわかるだろ、ポトフだよ」

当たり前じゃないか、何を言っているんだと言うような呆れたような顔を向けられイラッとしたが、我慢だ我慢と自分に言い聞かせフレンの手に握られた包丁を奪い四等分にされたジャガイモの皮を剥き水の入ったボールに入れアク抜きをする。
それから人参の皮を剥いて乱切りにし玉葱はくし形切りにする。横で感心するように俺の手元を見ていたフレンに冷蔵庫からウィンナーとベーコンを取り出すよう声をかけると二つ返事で冷蔵庫を開け目的のものを取りだしまな板の横へと置いた。

「結局ユーリがしてるじゃないか、僕もなにか手伝うよ」

邪気のない言葉に黙ってみてろとも言えず、鍋を用意するよう指示しそこに切った野菜を適当にブチ込んで水入れろと言うとフレンが訝しい顔をして、「もっと食材を大切に扱え」と言うもんだから「それはこっちのセリフだ」と言ってやった。

それからあーだこーだとお互いに文句を言いつつ適当に切ったウィンナー、ベーコン、コンソメ、味を整える塩と黒胡椒を入れさせて蓋をして煮込んでいる間に付け合わせのサラダを用意する。
匂いにつられてキッチンへと入ってきたラピードに余ったウィンナーを放り投げると器用にキャッチしデカイ図体を丸めてうまそうに食べていた。



レタスをちぎりハムやトマト、クレソンを皿に盛りつける。オリーブオイルにビネガー、粗びき胡椒を加え即席ドレッシングを作り終えた頃にはフレンの機嫌も最高潮に悪くなっていた。

「僕も手伝うって言ったのにユーリのアホ、マヌケ、ロン毛!」

「ロン毛カンケーねぇだろ!それにお前に全部手伝わせてたら終わらねぇんだよ」

その言葉にフレンは悔しそうに顔を歪ませたがそれ以上発することなく、フンとそっぽを向いて食器棚からポトフ用の底の深い皿やスプーン、フォークを取り出してテーブルに並べていく。
しかしここで気になることが…


「なんで五人分なんだよ」

テーブルに並べられたあきらかに人数より多い食器に問うとフレンは目を合わすことなく
「エステリーゼ様達がお見えになるんだ」と言い俺が寝ている間に買ってきたのか色とりどりの花束を花瓶に生けテーブルの真ん中に置いた。

「あぁ?んなの聞いてないぞ」

「今言ったじゃないか」



…コイツ、喧嘩売ってんのか


悪気があって言っているのではないくらい分かっている。だがしかし、コイツよくこれで帝国騎士団の団長になれたなと思う。
自分勝手と言うかなんと言うか…

まぁ多分、幼馴染みだからこその部分もあると思う、てか思わないとフレンの部下が可哀想だ。


「まぁいいや、エステルの他に誰が来るんだよ」

今日一番の深いため息を吐いて椅子に座りテーブルに肘をついてフレンを見上げる。


「ルーク様とリタとレイヴンさんだよ」

少しは落ち着いたのかフレンは向かい側の椅子に座り花瓶に生けた花を眺めている。
目線が一緒になりカチリと目が合う。

「なんだ、その組み合わせ?」

「さぁ?朝レイヴンさんから美味しいカンパーニュが手に入ったから持っていくって連絡が来て、エステリーゼ様やルーク様も一緒だって聞いただけだから」


ふぅん、と是でも否でもない答えを述べるがフレンも格段気にした様子もなく壁にかかった時計の方へと目線を移した。
俺もつられて時計を見やる。

時刻は調理を始めてから二時間が経とうとしていた。
窓枠から外を見ると夜のはじまりを告げるかのように暗くなろうとしている。
しかしそれとは反して外から聞こえてきた聞き馴染んだ数人の笑い声や怒った声が耳に入り、騒がしくなりそうだと自然と一層のため息が出るのであった。


さあ、パーティーはこれからだ。




【END】





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テイルズを知らないとは思えない素敵な作品(笑)感謝(≧∇≦*)>

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