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□石島土門のトンマな一日(烈火)
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「ね、音遠!? それに亜希と魅希!!」
(確に、美人でセクシーだけど、べ、ベタだ。この展開はべたすぎる!)
「え〜あんた、この学校だったの
と亜希が嫌そうに溜め息をつく。
「ぼさっとしてないで、さっさと席につきなさい。この怪力バカ
「なんだと、魅希、てめぇ、喧嘩…….」
「おだまり授業始めますよ」
とぴしゃりと音遠が声を張り上げた。
「はい、おねぇさま
と亜希と魅希。
「それから、遅刻してきた石島君? スタンドアップ。これから、遅刻してきた人は、アベ・マリアを原曲キーで歌えたら、座っていいわ」
そんな女尊男卑な…….
激しい羞恥プレイ……
そんなこんなで、音楽の時間が始まった。
小一時間。結局、歌えず立ちっぱなしのまま、土門は授業を終えた。
なんかどっと疲れた。
重い足取りで教室のドアを開ける。教室はいつにもまして盛り上がってある。そんなこちゃどうでもいい。
(あれ、席替えしたかな……)
密林ジャングルみたいにいりくんだ人をかきわけて席を探せば、なんと、なんと、風子様の隣じゃないか
(あぁ……神様ありがとう)
なんて、柄にもなく感謝してみる。
「風子様〜
と机に突っ伏している風子に嬉しさのあまり声をかけると、ギロリとした目線が返って来た。
「お、お疲れみたいで」
「まーね」
と風子は通路を挟んだ隣の席を見ろと土門に合図した。
そこには…….

長い黒髪の青年がにこやかに微笑みながら手をひらひらと振っている。
「ら、雷覇!?」
「風子さん。お疲れですか?」
と彼に言われると風子はガバッと起き上がって、
「あんたが外周競争しようなんて言うからだよ」
「え? 何周走ったんですか?」
と恐る恐るきくと、風子は指を二本立てた。
「二十周、まったく雷覇君は早いよ」
すると、雷覇は風子ににっこりと笑いかけて、
「いえいえ、そんな。風子さんが一緒だからです。また、朝、走りましょうね」
(なにぃ〜! 朝デートだとぉ! しかも堂々と次の約束まで……風子様は俺の……)
なんか、雷覇スペースだ。
(気にくわん)
「雷覇、てめぇ何でここにいやがる?」
(風子は渡さねぇ……恋敵が)
すると、雷覇は
「月白さんに学がない奴は駄目だって言われまして」
と済まなさそうに頭をガリガリとかきながら苦笑いをする。気のせいか風子の頬が赤い。
あぁ……先が思い遣られる。
「あ、土門さん、これからよろしくお願いしますね」
未来に一抹の不安を感じる土門であった。
「それより、ねぇ、土門、今日……」
「なんですか?」
もしや、デート!? とか思って風子見つめると何故か、睨まれた。
「まさか、忘れてないよね?」
「……は、はい。もちろん」
とは風子の表情が怖くて返事してみたものの、デートの約束なんてした覚えがない。何よりそんな約束したら忘れるはずがないのだから。一生懸命思い出そうと授業中考えていたら、先攻が明日は雪が降ると大騒ぎしていた。
二時間目の休み時間、土門は柳に会った。
約束(?)はついに思い出せなかった。
「よぉ〜柳ちゃん。お久しぶり〜」
「わぁ……土門君。お久しぶり」
いやぁ……今日は何かついてないことばっかだからなんとなく、柳の笑顔に癒された。久しぶりにみた学生服姿は可愛らしい。
しかし、その陰から、葵が現れた。
「あ、葵じゃねぇか」
葵は土門の顔を見るなり、キッと表情をきつくした。
「柳ちゃん、こいつなんか邪な感じだよ。鼻の下ながいし。柳ちゃん、こんな奴に関わらないでさっさといこっ!」
とプィと踵をかえして柳の手を引く。
(なんだよ……今日はやたら敵意向けられるんだけどな)
「葵じゃねぇか。なにしてんだよ。バイトはどうしたんだ?」
すると、葵はめんどくさそうに振り返り、
「暫く平日のバイトを休ませてもらうんだ。おばさんがやっぱり学校にはいきなさいって」
と土門を一瞥した。
「かあさんが?」
し、知らなかった。漫画ならガビーンとか効果が入るとこだろう。
「ボクは柳ちゃんを守るの。土門みたいな男から。烈火君が今ちょっと忙しいみたいだしね」
「烈火が?」
そういや、今日、まだ一度も烈火を見掛けていない。
「今日は、ね。特別だから……しょうがないよ。ね、土門君」
と柳の表情に一抹の寂しさが過った様な気がした。
「あ、あぁ」
(さっきから、なにか引っ掛かる……何故急に、あの頃の人間が周りに現れ始めたのか。今日は……一体)
「もしかして忘れてる?」
葵にじっと見透かすように見つめられ、たじろいでいると、
「そういえば、土門君。さっき、聞いた話なをだけど、空の空海さんが学校に来てるんだって」
とのほほんと柳がいった。
俺の日常どうなってんだ? なんて、土門は頭をかかえた。
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